新卒採用をスムーズに行うためには、対象となる年代の特徴を把握することが大切です。2020年春に大学卒業予定の人が生まれたのは1990年後半、いわゆる「さとり世代」に該当するといわれています。こちらに関して「人事労働用語辞典」(2013.06.24)ではバブル後の1990年代に生まれた人などの掲載がみられます。さとり世代という言葉は、2013年の「新語・流行語大賞」にノミネートされたことでもおなじみです。
まず「さとり世代」の理解から始めよう
さとり世代にみられる大きな特徴として、物欲がない、安定志向を望むなどが挙げられます。
その背景には「ゆとり世代」の存在を見逃すことができません。ゆとり世代とは「学習指導要領」の変更により「ゆとり教育」を受けた世代のことをいいます。
この世代の人は、個性重視の教育を受けるなどの特徴があり、それが生き方にも反映されているようです。また、さとり世代とゆとり世代、双方の時代を生きる人の考え方には共通点も少なくありません。
ただし、さとり世代とゆとり世代との関係や、さとり世代の年代には諸説があることを知っておきましょう。
就活生の本音を知ろう
新卒採用に臨むためには、就活生の考え方を理解することも欠かせません。
こちらに関しては、2020年3月大学卒業予定者を対象にした「2020年卒マイナビ大学生就職意識調査」(株式会社マイナビ)に興味深い内容があります。
まず、注目されるのは学生の就職観です。こちらは「楽しく働きたい」と考える人が38.6%であり、約4割近くいることになります。
つまり、仕事を通じて社会的意義を求める人よりも、自分の楽しみを優先する人が少なくないのです。
また、中堅・中小企業志向が上昇しており、大手企業志望者(52.7%、「絶対に大手がよい」「自分にやりたい仕事ができるのであれば大手企業がよい」の合計)との差が縮まった点にも注目されます。
ちなみに、中堅・中小企業志向の合計は43.4%になり「やりがいのある仕事であれば中堅・中小企業でもよい人」と「中堅・中小企業がよい人」とで構成されています。
企業選びに際しては「安定している会社」が39.6%であり、安定した職場を望む声も少なくありません。
こちらは、2001年卒からトップを保っていた「自分のやりたい仕事(職種)ができる会社」を抜いた点にも注目です。
このような考え方は、さとり世代が求める安定志向に通じるのかもしれませんね。志望職種として「営業企画・営業部門」(24.3%)、「商品企画・開発・設計部門」(16.0%)などに人気があります。
また、なにがなんでも就職したいという「就職希望度」は87.0%ですが、就職が叶わなかった場合はフリーター(24.3%)という選択肢も少なくないようです。
学生が敬遠したい企業も気になるところです。学生が行きたくない会社で最も多いのは「ノルマのきつそうな会社」(34.7%)。
さらに「転勤の多い会社」(23.6%)も注目されます。海外志向に関する「海外勤務はしたくない」(55.7%)などの声も見逃せません。
このような意見もあり、プレッシャーを感じにくい働き方や環境の変化を望まない働き方を願う人が少なくないことが考えられます。
そのうえで新卒採用に生かそう
企業が新卒採用に成功するためには、就活生が生きてきた時代背景を理解することはもちろん、就活生の本音を知ることも大切です。そのうえで、具体的な採用計画を立てて実行に移しましょう。新卒採用の内定に至るまでには、数回の選考を経ることが少なくありません。それぞれの段階での先行をスムーズにするためにも、入念な準備を行うことが大切です。
まず、必要なのは自社が求める人物像をはっきりさせることです。どのような人材を希望するのかは企業によって異なります。「元気な人がほしい」「コツコツと地道に仕事ができる人がほしい」など、具体的に挙げながら絞り込んでいきましょう。また、人事に関わる部署だけで判断するのではなく、各部署の声に耳を傾けることが大切です。そうすることで採用後のミスマッチを防ぐことにも役立ちます。
新卒者は社会人経験がないため、転職希望者のようにキャリアを問うのではなく、今後の成長に期待する必要があります。そのためには、少しでも早く就活生と出会う機会をつくることが大切です。「インターンシップ」の導入は代表的な事例といえるでしょう。こちらの導入により、学生が「就業体験」ができることが大きなメリットです。職種研究の機会を得られるほか、仕事のイメージがしやすいため、志望動機にもつながりやすくなります。
新卒採用に成功するためには、自社ならではの持ち味をアピールすることも大事なポイントです。たとえば、中小企業の場合は「一人で多くの業務に関われる」「自分の意志を反映させやすい」などの特徴がみられます。中堅・中小企業を志望する人が増えたいま、大企業にはない魅力をアピールすることは採用につながる大きなチャンスになります。将来性のある人材を採用するためにも、これまでお話ししたポイントを参考にしましょう。