る経営コンサルティング企業の社長は、指導した720社中400社が過去最高益を上げるなど、その高い手腕に定評があります。”経営のカリスマ”とも呼ばれている社長は、『朝一番の掃除で、あなたの会社が儲かる!』や『社員のやる気はお金で釣るのが正しい』と言っています。それは一体、どういうことなのでしょうか。また、朝一番の掃除がなぜ業績アップに結びつくのでしょうか。

 

厳しい時代を生き抜くには社員教育が大事

社長は「この先、日本の景気が大きく回復することはない」と言います。
日本経済を大きく牽引してきた自動車メーカーは生産拠点を海外に移し、家電ではアジアの新興企業が台頭しています。住宅産業も、少子高齢化の余波で伸び悩んでいます。
今の時代は業績が下がるのが当たり前。その厳しい時代の中で利益を上げ、強い会社として生き残っていくためにどうしても必要なのが社員教育です。
ある企業ではこの社員教育に「1人年間300時間」を割いています。予算は「年間1億円」を組み込みます。
なぜこれほどまでに、社員教育に時間とお金をかけるのでしょうか。

社長によれば、社員の自発的なやる気に頼っている会社は、総じて業績が悪いそうです。
むしろ、社員に強制的に勉強をさせている会社のほうが、業績が良いのです。
なぜなら普通の社員は、良いことは強制されなければやらない、「頑張れ」と口で言われただけでは動かないものだからです。
もちろん、強制されれば社員がやる気を出すかと言えば、そうではありません。
社員教育を受けることが仕事の一環であり、そこに報酬が発生すればこそ、社員はやりたくなくても我慢してやるのです。
「やりなさい」と言うだけではダメでも、「これをやったら賞与がアップするからやりなさい」と言えば社員は頑張ります。つまり、社員のやる気はお金で決まるのです。

社員のやる気はお金で釣る

ただ働きやボランティアでは、社員は勉強したり、いい仕事をしようと頑張ったりはしません。
そこに報酬が発生するからこそ、「嫌々ながら」「しかたなく」頑張るのです。
「お金をもらう以上、やらないわけにはいかない」「本当はやりたくないけど、お金がもらえるからやろう」と思える。これは人間の心理として当然です。
会社も、お金を払うからこそ勉強を義務づけたり、強制することが出来るわけです。

お金で釣るのは不純ではないか、という声があるかもしれませんが、きれいごとにとらわれて会社の業績を悪くするようでは本末転倒です。結果が良くなるならば、最初の動機が不純でも構わないのです。
お金で釣った結果、社員の質が向上して会社の利益へと還元されるのならば、社員教育に時間と予算を注ぐことも決して無駄ではないと言えるでしょう。立派な投資コストだと考えればよいわけです。

朝一番の掃除を食事券で釣る

ある企業では、毎朝30分、全社員で掃除をします。始業前や終業後にボランティアで行う掃除ではなく、朝礼後の就業時間内に、計画的に行う掃除です。当然、この掃除に対しても給料が支払われます。
この掃除を「環境整備」と呼んでいます。

「環境」を「整えて」「備える」こと、つまり仕事をやりやすくするための大切な取り組みです。そしてこれこそが、業績アップのためにもっとも効果的な取り組みなのです。

 

整えるとは、「整理」=捨てること、「整頓」=そろえることを意味します。
不必要なものを見極め、本当に必要なものに絞って準備すれば、必ず業績はアップします。やらなくてよいことを捨ててしまえば、やるべきことだけに集中できるからです。

 

この「環境整備」を有意義なものにするために、4週に一度は「環境整備点検」を行いますが、ある企業ではこのときの点数の結果が賞与と連動する仕組みになっています。
他にも、点数の合計に応じて1人2000円分の「食事券」がプレゼントされます。
「食事券」が欲しい、賞与をアップしてほしい、そう考えるからこそ、社員は「環境整備」に取り組むのです。

 

ところで、この「環境整備点検」を行うとき、必ず守っていることが2点あります。

一つ目は、抜き打ちチェックはしない、ということ。
二つ目は「チェックリスト」に基づいて点検する、ということです。

抜き打ちチェックをしなかったら、点検日の前日だけ環境整備をしてあとはさぼってしまう社員が出てくるかもしれません。でもそれでよいのです。
点検日の前日だけでも4週に1回は必ずやるなら効果は出ます。
抜き打ちだと、どうせやっても仕方ない、と諦めて環境整備をやめてしまう社員も出てきます。
どちらがより良いかは明白でしょう。

 

「チェックリスト」に基づいて点検するのは、チェックという目的をはずれて、
出来ない理由を追及したり責めたりすることを避けるためです。
大事なのは出来ているか出来ていないかのチェックであり、叱ることではありません。
出来ないことを叱ることが目的になってしまうと会社の雰囲気が暗くなり、
社員のモチベーションも下がってしまいます。
「環境整備点検」は、あくまで社員のモチベーションを保ち、改善をはかるために行われるものなのです。

まとめ

業績アップへの近道は何よりも「環境整備」です。
会社は、社員が「環境整備」に持続的に取り組むことを後押しするため、やる気をお金で釣るのです。
たかが掃除で会社が変わるなんて、社員のやる気をお金で釣るなんて、と思われるかもしれません。しかし多くの会社がこの取り組みにより結果を出しています。
実際にどんな効果が現れるのか、ぜひとも朝一番の掃除を仕事として取り入れて、確かめてみてほしいと思います。