んな会社にも必要な仕事、それが経理ではないでしょうか?たとえ自分1人で行う個人事業主であったとしても、経理の仕事は一式ついてきます。ましてや会社組織となれば、経理は大きな存在となります。しかし、実務については得意でも、会社の数字については弱いという経営者も実は多いのではないでしょうか。ここでは、経理の力を経営に生かすためのポイントをご紹介します。

 

経理とは

経理とは、会社における毎日のお金の出入りの管理と言ってしまえばそうなのですが、それだけにはとどまりません。
経理で出る数字は会社の経営の通知表となります。
そして、その数字をうまく使えば増収増益につながり、会社の将来を指し示す灯台ともなります。

しかし、経理はあくまでもバックヤード。いくら経理に力を入れても、経理だけでは収益は生み出しません。
経理の力を会社経営にどう生かしていくかが大切なのです。

そんな経理の力を大切に考えているのがある中小企業経営者です。
社長が考える経理の力とはどのようなものなのでしょうか?
ここでは5つに整理してご紹介します。

会社を伸ばす経理の力 5つのポイント

1 なるべく多くの社員に経理を経験させる
経理とは、社員に会社のお金のことがあらわになってしまう業務です。
お金のことだけに、あまり多くの社員の目には触れさせないようにして、
信頼の置ける特定の経理社員がずっと担当している、という会社が多いのではないでしょうか?
しかし、社長はそれに対してNOを言います。
誰にもできない業務を特定の社員が専任でしてしまうと、不正の温床となります。
ある企業では、経理は誰でも学ばなければならないスキルと位置づけて、2年ごとに経理担当者を替えています。

2 経理の経験を通して数字に強い社員を育てる
なるべく多くの社員に経理を担当させる目的は、数字に強い社員を育てることにあります。
経理が売上や利益などの数字をまとめて営業社員に渡したり、各部門に関する数字を提示したりということはどこの会社でも行われていることです。
しかし、その数字を見ただけで状況をリアルに想像したり、どこに問題点があって、それをどのようにすれば改善するのかを感じ取ることのできる社員は少ないのが現状ではないでしょうか。

他部署の社員であっても、一度経理を担当すると、書類に並んでいる数字の意味がわかり、その動きがリアルに感じられるようになってきます。
経理を担当してから営業や経営サポート部に異動すると、このように数字に強くなっているので、やるべきことが明確になります。そのような社員が増えることは業績アップにつながります。

経理の数字に不備があると現場から指摘が入ったりもするので、経理の社員も鍛えられます。
実例企業では、数字に強くなると給与がアップするしくみになっているので、社員のモチベーションも上がりますね。

3 IT化を積極的に進める
実例企業では、他社に先駆けて経理業務のIT化を進めてきました。
自動化できるところは自動化して、それで浮いた時間と労力を、顧客対応のような本来の業務に当てるためです。
また、お金をかけてでも、自社の事情に即した、自社オリジナルのシンプルで使いやすいソフトを開発することにこだわりました。
そして、社員はもちろんのことパートにまでiPadを支給し、社内の全員があらゆる場所で経理ソフトを使える環境を整えました。
そうすることによって、たとえ出先であってもお金の管理をすぐに終わらせることが可能になり、業務の効率化につながったのです。

4 スピードにこだわる
実例企業の経理システムはスピードにこだわって開発されています。

まず、経理システムそのものの開発スピード。
社長の「安くて時間がかかるよりも、高くても早いほうがいい」という考えのもと、
お金をかけて早く開発されました。
1年かかるものを半年で開発できれば、半年早く使えるようになります。
一時的にお金がかかったとしても、その半年の間に業務が効率化できればランニングコストが安くなり、
結果的には経費削減となります。

そして、毎日の運用の中ではスピード決済にこだわっています。
社員がiPadなどのモバイルデバイスから経費を入力すると、すぐに仕訳されます。
その半分はその日のうちに承認され、すぐに社員の口座に経費が入金される仕組みとなっています。
これならば社員もすぐに経費精算をしてしまおうという気になるし、経理社員の労力も削減されますね。
これによって経理の残業が40%削減しました。

5 経理に100を求めない
社長は誰よりも数字を大切にしていますが、「自社の経理に100は求めない」と言います。
自社でやるのは85で十分、あとは専門家にアウトソーシングするのです。
100を求めてしまうと、経理社員が専門職となり、スピード感も失われてしまいます。
自社で行うのは誰でも扱える範囲の85と割り切ることで、経理を社員教育の一環と位置づけ、
経理よりも現場を大切にすることが可能になるのです。
現場に労力を割り当て、スピードアップすることで、業績を伸ばすことができます。

まとめ

社長は、誰よりも経理の大切さを理解しているがゆえに、
経理に関して力を入れるべきところと抜くべきところをうまく使い分けています。

・経理に求めるものを85に抑えることで、多くの社員が経理を経験して数字への理解が高まる。
・お金をかけてでもシンプルで社員全員が使いやすいように経理のIT化を進め、経費の処理を省力化。

このように、経理は単なるバックヤードではなく、
うまく使えば社員教育の場ともなり、業務を推進するエンジンともなるのです。
経理の力は数字の力。会社の業績を伸ばすためには数字を理解することが必要不可欠です。
いま一度数字の力を見直してみてはいかがでしょうか。