分の会社の値段を答えてくださいと言われて、即答できる経営者はそれほど多くないはずです。
しかし、値段も知らずに物を買ったり使ったりすることがないように、自社の価値を知らずに経営がうまくいくことはありません。とはいえ、株式上場していない中小企業にとって、自社の本当の値段を算出するのは難しく感じるものです。
ここでは、企業価値はどのように計算できるのかと、企業価値を計算する必要性について取り上げていきます。
会社の値段を知ることが、今後の事業運営やモチベーションアップにもつながるメリットの多いものであることを理解できるはずです。

 

会社の値段を知っておかなければならない理由

まず、会社の価値や値段を知っておく必要性について取り上げてみます。

そもそも自社の価値を知らないで経営するということ自体がおかしなことです。
経営者として自分の立ち位置や目標とすべきものを定めるためにも、自社の値段を正しく把握しておくことは重要です。

それに加えて、他社から事業提携や買収などを持ちかけられることも考えておく必要があります。
そうした際には、当然ながら、まず売り手側の企業が自社の売却希望価格を提案します。
つまり自社の本当の値段を知っていなければ、そうした交渉の場に立つことさえできないわけです。

もちろん事業を売却するつもりはないという経営者の方が大半でしょうが、自社の価値を知らないならば、他社と何らかの交渉をする際にも不利益に働くことが多いのは事実です。

また、経営者として会社の値段を知っていると、自社の成長を感じることもできますので、自分自身や社員のモチベーションアップに役立つという点でもメリットがあります。

会社の値段を計算する方法3つ

ではどうすれば会社の値段を計算することができるのでしょうか。
ここでは、3つの具体的なアプローチについて取り上げて考えていきます。
この3つの手法は、会社の買収やM&Aの現場で活用されることもある、実際的な会社の値段を知るための方法です。

1. コストアプローチ

コストアプローチとは、バランスシート(貸借対照表)に基づき純資産を基準として企業価値を推し量る方法です。別の言い方としては、ネットアセットアプローチとも言われます。
純資産に基づいて算出するため、客観的な結果(その時点での資産価値)を見ることができますが、将来性や収益性など不確定的な要素は排除されています。
また、時価に合わせた修正を行うとバランスシートは大きく変動しますので、そうした点でもこれだけでは、実際の価値を推し量ることは難しいといえます。
そのため、実際のM&Aや買収計画においてはあまり使われることはありません。

2. インカムアプローチ

これは予測収益から企業価値を計算する方法です。
会社の将来性や収益性に焦点をおいているため、会社のそのものの魅力や発展性も含まれています。

インカムアプローチには、DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)と配当還元法の二つがあります。
DCF法は、事業計画に基づいて、その会社が今後生み出すキャッシュフローを予測するものです。
配当還元法は、債権者や株主に還元できるキャッシュフローから企業価値を算出する方法です。
DCF法はM&Aの場でも一般的に用いられるものです。

DCF法で会社の値段を正確に知るうえで大切なのは、計算のもとになる事業計画です。
事業計画がずさんであったり曖昧であったりすれば、算出されるキャッシュフローは信頼性の低いものになります。DCF法を用いるためには、現実的で精度の高い事業計画を有していることが必要条件になります。
また、あくまで事業計画に基づく予測にすぎないので、市場に大きな変動が生じるなどの不確定要素をすべて排除することはできません。

3. マーケットアプローチ

マーケットアプローチは、マーケット(市場)で実際にあった取引を基準としてその会社の値段を算出する方法です。
算出するためには、比較対象となる同業者や、事業規模が類似した会社の事例が必要になります。
マーケットから算出した企業価値ですので、現時点での現実的な評価を知ることができます。
しかし、類似した同業他社が少なかったり市場が不安定な時だと、正しい結果を得ることは難しくなります。

マーケットアプローチには、市場株価法や類似会社比較法など幾つかの方法があります。
実際のM&Aにおいて企業価値を正しく知るときには、マーケットアプローチだけで算出することは稀で、インカムアプローチなど別の手法と合わせて用いるのが一般的です。
しかし、自分の会社の値段を知るという観点に立って考えてみるならば、非常にメリットのある方法の一つといえます。市場から見た現時点での自社の価値を冷静に判断するという点で、マーケットアプローチは有益なのです。

まとめ

会社の値段を知ることは、経営者にとって大切であることを考えてきました。
事業を売却するために企業価値を知るのではなく、自社の値段を知ることで、それにふさわしい経営方針を打ち出すために役立てることができます。
また経営者としてのモチベーションアップのためにも、会社の値段を定期的に考えるのは役立ちます。
会社の値段を知ることは、地図で自分のいる場所を確認するようなものです。目的地ともいえる「社員や自分自身の幸福」に向かって進んでいく中で、会社の値段を経営者として把握することはとても大事なことなのです。