今、ROE経営が注目されているのをご存知でしょうか。
ROEとは、会社経営において、どれだけ効率よく利益を上げているかの目安になる数値です。
しかし、株主重視の経営を行わなければならない上場企業と、株の所有者と経営者が一体であることの多い中小企業では、ROEの意味合いが違ってきます。
では、中小企業はどのようにこの指標を取り入れていけばよいのでしょうか? 中小企業を経営する上でのROEに対する考え方を紹介します。

 

ROEとは?

ROE とはReturn on Equityの頭文字で、日本語では「自己資本利益率」という意味になります。当期純利益を株式資本で割ったもので、どれだけの自己資本を使って、どれぐらいの利益を上げたかを割合で分かるようにしたものです。

ROEの数値は、3つの要素をかけ合わせることで計算できます。
ROE=売上高純利益率×総資産回転率×財務レバレッジ

それぞれの計算方法
・売上高純利益率=当期純利益÷売上高
・総資産回転率=売上高÷総資産
・財務レバレッジ=総資産÷自己資本

売上高純利益率は収益性、総資産回転率は効率性、財務レバレッジは安全性を表しており、どれもバランスのよい経営に欠かせないポイントです。
ROEは、儲けがどれぐらいあるのか、資産を効率的に活用しているか、借り入れと自己資本は安全な割合かどうか、という点を一度にチェックすることができます。たくさんの財務指標がある中で、賢い経営ができているかを把握するための指標であると言えます。

ROEを向上させるための方法

ROEの数値が高い方が、賢い経営をしているということが分かりました。
しかし欧米企業のROEは15%程度ですが、日本企業は平均10%弱であり、比較すると低い水準にとどまっている状態です。
日本のROEが低い原因は、経営陣が利益を株主に還元したり再投資に回したりせず、内部に溜め込んでいたためだと言われています。
バブル崩壊前後の1970年代から低下し、海外の資本が入って株主重視の経営をするようになった2000年代頃から緩やかに上昇していきました。それでもなお、欧米には追いついていません。

それでは、日本企業のどこを改善すれば、ROEの数値がアップするのでしょうか。
ROEの計算式を細かく分析していくと、日本企業ではROEの3要素のうち、売上高純利益率と財務レバレッジが低いということが分かります。

売上高純利益率とは収益性の高さのことで、ここをアップさせるにはコスト意識をより一層高めることが重要です。コスト意識については、経営者や幹部だけでなく一般社員にも浸透させ、会社全体で取り組んでいく必要があります。

財務レバレッジとは、総資産の中での株主資本の割合を表す数値で、経営の安全性を示します。株主資本は自己資本とも呼ばれ、自己資本が厚い=ROEが低いという図式です。
利益を蓄積させず投資に回したり、借入金を恐れずに有効活用したりするなど、自己資本に頼らずに事業を運転することが、株主の利益につながるとされています。

ROEの値だけを見ると、借金をすればするほど高くなるという図式になっています。しかしそれでは自己資本率が下がり、安全な経営とは言えない状態になってしまいます。きちんと経営計画を作り、キャッシュフローを回すことも大切です。

中小企業でもROEが大切なのはなぜか

株式を公開して資金調達を行う上場企業にとって、株主利益の指標となるROE経営はとても重要です。
特に欧米の株主たちは、ROE数値を重視して投資を行っています。
その一方、経営者がそのまま株をもっていることの多い中小企業にとっては、ROEは無視してよいものだと思っている方もいるかもしれません。
しかし、中小企業にとっても、ROEを重視した経営を行うことには、いくつかのメリットがあるのです。

銀行からの評価が上がる

銀行が企業を格付けする際、経営能力や事業戦略などの企業資質以外に、決算書から収益性、効率性、安全性という数値を分析して、企業に点数をつけていきます。この3つの数値は、そのままROEの3要素と重なっています。よってROEを意識した経営を行うことが、銀行からの格付け向上につながっていくのです。
特に事業拡大を考えている場合は、銀行から融資を受けやすくなる、借入金利が下がるなど、ROEの向上がメリットをもたらします。

まとめ

ROEの高さは、投資した資金を有効に活用できているかどうかを示しています。
中小企業の経営については、利益が出ていればいい、キャッシュフローが回っていれば大丈夫とも言えますが、ROEという自己資本に対する利益率という目線でチェックしてみると、新たな目線で自分自身の経営能力を確認することができます。
いわばROEは、経営者自身の通信簿のような役割を果たしているのです。

ROEは上場企業だけの問題で、中小企業には関係のないものだと思われがちです。しかし、ROEを意識した経営を行うことには、銀行からの融資を引き出しやすくしたり、自身の経営能力を向上させたりなど、中小企業にとってもメリットがあります。一見面倒なROEの計算式ですが、これまでの経営を振り返る意味でもぜひ取り入れて、経営に役立ててみてはいかがでしょうか。