「さとり世代」には厳密な定義があるわけではありませんが、一般的には1990年代後半以降に生まれた世代を指しています。つまり、2020年以降の新卒採用に応募してくる若者は、さとり世代に該当することになります。優秀な人材を採用するために、企業の採用担当者はさとり世代の気質や考えかたの特性を理解して採用計画に反映させる必要があるでしょう。

さとり世代は、物心ついたときからずっと不景気のなかで育ってきました。高度経済成長期やバブル期のような経済的に恵まれた時代を知りませんから浪費をせず、車やブランド品などを欲しがらないという特徴があります。恋愛に対しても積極的ではないといわれます。一方で、インターネットの普及とともに成長してきたような世代ですから、情報だけは豊富に手に入れることができました。さとり世代とは、情報の向こうに透けて見える厳しい現実を知って、世の中を「悟った世代」なのです。

 

さとり世代に期待してもいい理由とは

「夢がない」「草食系」などと揶揄されがちなさとり世代ですが、こと新卒採用に関しては、さとり世代には大いに期待してよいのです。
なぜなら、さとり世代は現実的ですから最初から負けるとわかっている勝負に打って出ないからです。

さとり世代は、誰もが憧れる大企業に就職できるのはごく少数のエリートであり、大部分の学生は自分の身の丈に合った会社に就職するという現実を知っています。
そのため、以前は優れた学生の応募が少なかった中小企業でも、うまく魅力を伝えることができれば、予想よりも多くの優秀な学生が応募してくる可能性があるのです。
また、地元志向の傾向が強いため、地方に拠点を置く企業にとっても有利です。

そこで、まず、学生に自社の魅力を伝えることが重要になります。合同会社説明会で学生に積極的にアピールしましょう。
その際、ブースで学生と話す役目は、できるだけ若く元気な社員に任せるべきです。仕事にやり甲斐を感じており、それが見た目から伝わるような社員ならいうことありません。
日頃から、さとり世代は動画やネットサイトのようなわかりやすい情報を好んで見ており、瞬間的に好き・嫌いを判断しますから、「ここで働けば幸せになれそうだ」という直感的なイメージを持ってもらうのです。

会社案内の印刷物でも、理解しやすい端的な表現を用いるべきです。
その内容は「働きやすさ」と「将来性」を強調するものがよいでしょう。
さとり世代は精神的なストレスを嫌い、仕事で自分を消耗させたくないと考えているため「働きやすさ」を重視するからです。
また、就職に際しては親世代のいうことを素直に聞き入れる面も持っていますから、親世代に納得してもらうために、会社が今後大きくなるという「将来性」を示しておくのです。

入社後も見据えた新卒採用を!

選考が始まったら、面接では親しみを感じさせる態度で臨みましょう。威張った様子や見下した様子を見せてはいけません。
フラットで風通しの良い会社であることを演出するのです。面接は会社が学生を選ぶためのものですが、学生からも選ばれているのだという意識を持っておきましょう。

面接や説明会では、「ここに就職したら成長できる」と感じてもらうと良いのです。
そのためには「このような研修制度があるから、こういう技術を身に付けられる」と会社で得られるスキルを説明します。
ただし、精神論を振り回してはいけません。あくまで合理的、理性的な研修を行っていることを強調しておきましょう。
さとり世代は将来のために自分の価値を高めたいと願う人が多いので「スキルアップ」には興味を抱く傾向があります。

面接時には若い社員を同席させましょう。ぜひ我が社に来てほしいと思える優秀な学生がいたら、あとで、若い社員に直接、コンタクトを取らせます。
さとり世代はSNSで「いいね」を得たがることからもわかるように、承認欲が意外にあります。
ですから「僕は、君に入社してほしいと思っている」と言われると、認められたと思って感激し入社に前向きになるでしょう。その社員は入社後もメンターとして新入社員のサポートをし、人材の早期離職の防止にあたります。

少子化が進む日本では人材難の時代はまだ続くと考えられます。
新卒採用で優秀な人材を確保できるか、そしてその社員を定着させられるかどうかに会社の命運がかかっているといっても過言ではありません。
さとり世代への理解を深めて良い新人社員を採用しましょう。