中・長期的にどのように会社を経営していくかについての事業計画である「経営計画」は、目標を達成するためのロードマップといえるでしょう。
しかし、経営計画書を作成していない会社も少なくありません。
銀行から融資を受ける際に、短期の事業計画書や資金計画書を作成したことがあっても、経営計画書の作成は未経験という経営者も多いのではないでしょうか。
年間目標で十分と考える会社も多いようです。しかし、会社の生産性を高めるために、まず取り組むべきなのが経営計画です。特に中小企業では結果に直結しやすく、短期的な効果も期待できます。
今回は、経営計画書の重要性について、解説いたします。
なぜ経営計画書を作らないのか
今回解説する経営計画書ですが、そもそも経営計画書を作らない方には、どのような考えがあるのでしょうか。
経営計画書を作らない経営者の方の主な理由には2つあります。
一つ目は「経営計画は自分の「頭の中にあるから心配するな」と自分の頭だけに経営計画を入れておき、公開しない経営者です。
しかし、社長の頭の中にしかない、不透明な経営計画を信じ、普段の業務に取り組む社員の方々のモチベーションは向上するのでしょうか。
二つ目は「うちの業界は変化が激しいから、計画を立ててもうまくいかないことが多い」とおっしゃる経営者です。
変化の激しい業界だからこそ、現状の業務を分析して、イレギュラーに対応するための準備をしなくてはなりません。
自分の会社には何ができて、技術的にこのような展望がある、ということを把握しておくことが大事なのではないでしょうか。
次からは実際にどうして経営計画書を作ることが大切なのかについて確認していきます。
経営の軸を作る!経営者にとっての経営計画の重要性
経営者にとって経営計画が重要なのは、経営の軸を明確にできるからです。
経営者の経営判断が軸を持たず、右往左往していては業務の効率が悪いうえに、社員のモチベーションの低下や不信感にもつながることがあり、目標達成は難しいといえます。
ブレない軸を持つことは、安定的な経営にとっても必要不可欠です。まずは、大まかでもかまわないので、10年後の会社のあるべき姿をイメージしてみてはどうでしょうか。
長期的な視野で会社のビジョンを構想することで、経営計画についての考えを深めやすくなるからです。
経営計画の一般的な手順は、まず市場動向や自社の強みなど、外部要因と内部要因を分析することから始まります。
そして、経営理念を見直し、目指すべきブランドイメージや経営方針などを決めます。過去の実績を振り返ることも重要です。
経常利益や利益構成比、主力商品の売上げなどをチェックします。そして、成功・失敗事例から過去の経営課題の解決状況を把握したうえで、現在の経営課題を抽出します。
会社がいくら、主力商品として売り出している商品であっても、市場の変化や、新技術の台頭により、いつ売れ行きが伸び悩むかはわかりません。
その時のために市場動向を観察し、策を講じることが非常に大切になってきます。
また、逆に商品自体は、あまり実用性のないものだったとしても、その商品を作るための技術が実はすごくレベルの高いものだった、という場合もあります。
経営計画書を作成することは、もしもの場合に備えるだけでなく、自社を見つめなおし、強みを発見し、新たな市場を開拓するチャンスでもあるのです。
最終的には、長期経営計画書だけでなく中期経営計画書を作成し、売上高、従業員数、店舗数など具体的な内容を含めましょう。
中期経営計画の期間は一般的に5年ですが、見通しが立ちにくい場合は3年でもかまいません。
目標となる数値に対して、期限を設けると、さらに具体的になります。時間を意識することで、行動に変化が現れるためです。
また、内容を記述するときは「誰に(ターゲットになる顧客層など)」「何を(商品やサービス)」「どのようにして」という3つのポイントを明確に記述するのが重要です。
現在の会社の状況と将来あるべき姿、この2つを経営者に認識させてくれるのが経営計画といえます。
生産性とモチベーションがアップ!従業員にとっての経営計画の重要性
リクナビNEXTが転職経験者100人にに調査して発表した「退職理由の本音ランキング」では、
「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった(23%)」
「社長がワンマンだった(7%)」
「社風が合わなかった(6%)」
「会社の経営方針・経営状況が変化した(6%)」
など、仕事内容での退職より、会社や経営者への不満が多く退職の理由として、あげられていました。
経営者が業界や自社の状況のことを最もよく知っており、誰よりも会社のことを考えているのは間違いないでしょう。
しかし、それが伝わらなければ、従業員は会社を去ってしまうかもしれません。逆に、社長や会社に全幅の信頼があったとしても、すべてを頼ってしまって指示を待つ従業員に育ってしまいます。
経営者と従業員の溝を生まないためにも、経営計画を示すことは重要です。
経営計画を従業員に伝えることは、仕事に対するモチベーションを高め、メンタル面で社員を支えるためにも非常に大切です。
経営計画を理解していれば、従業員も経営に参加している意識が芽生え、やりがいを感じられます。
また、会社が大きくなるほど部署間に壁が生まれやすいものですが、経営計画が示されていれば、目標を共有しやすく生産性もアップします。
最終的には経常利益が上がるなどの結果となって現れるでしょう。従業員にとっては、目標を達成するために顧客単価や顧客数などの具体的な数値も重要です。
計画は達成されることもされないこともあるでしょうが、いずれにしてもPDCAのサイクルが作られます。
成功事例や失敗事例を経営計画に照らし合せながら蓄積できるかどうかは、今後の生産性に大きく関係するのです。
人材育成としての経営計画の重要性
人材育成のツールとしても経営計画は重要です。中期経営計画の作成は、将来の役員候補である管理職を中心に行われるのが一般的です。
そのため、この経営計画書作成のプロジェクトを通じて、経営者としての視点を学べ、後継者就任の動機付けになりますし、中・長期的な経営戦略の企画力も養えます。
このような機会は通常の業務ではなかなか経験しにくいため、管理職にとっては貴重な財産になります。
経営計画を次世代の経営者・経営陣の育成の場と捉えて実施している日本企業も多くなってきています。
どのようにしたら利益は出るのか
現状の成果でこれからも事業を拡大していけるのか
人が辞めていくので対策を講じたい
会社としての展望を部下に伝えたい
後継者を育てたい
そのような方はぜひ一度、経営計画書の作成を学んでみてはいかがでしょうか。