TBSラジオは、2001年以降在京ラジオ局の中で聴取率単独首位を維持しているAM放送のラジオ局です。
そんなTBSラジオが立て続けに起こした改革が話題になりました。
聴取率No.1のラジオ局はなぜあえて大きな改革を行ったのか、そしてそれから学べることは何なのかをご紹介します。

王者TBSラジオが行った改革

聴取率が業界トップであるにもかかわらず、TBSラジオは大きな改革を行いました。その改革の中身は、大きく4つあります。
 
「スペシャルウィーク」の廃止
「スペシャルウィーク」というのは、年間6回ビデオリサーチ社が行っているラジオの聴取率調査週間のことを言います。
ラジオの聴取率調査は、機械で行われるテレビの視聴率調査とは異なり、個人に1週間のラジオの聴取時間を記入してもらうアンケート方式で行われています。2ヶ月に1回行われ、翌月に結果が発表されます。
このスペシャルウィークに向けて、各放送局は特別なキャンペーンやプレゼント企画、番組内容の変更などを行い、リスナーを確保しようとしてきました。
TBSラジオは、「スペシャルウィーク」という名称を使うことをやめ、この期間中に特別な施策をすることもなくすと発表しました。
 
野球中継からの撤退
TBSラジオは、2010年頃から、土日のデイゲームの増加に従いナイター中継からの撤退を検討してきたと言います。
そして、2018年には平日も含めて野球中継を取りやめました。
撤退の理由の中でも大きかったことは、野球中継の聴取率低下に伴って、広告収入が激減してしまったことです。
また、各野球場のラジオ放送用ブースの使用契約料も少なくなく、採算を取ることが難しくなっていました。
 
長寿番組の終了
野球中継からの撤退とともに、TBSラジオは幾つかの長寿番組を終了させました。
このことに関してTBSラジオの社長は、ウェブラジオに大きく路線を変えていくというのではなく、編成の都合と言及しています。
 
中高生番組の立ち上げ
多くのことを廃止して、新しく立ち上げたのは「中高生向け番組」でした。大幅に編成を変えることで、全く新しいターゲットに焦点を当てていくことを目的としました。
 

王者でありながらあえて改革を行った理由

TBSラジオが、聴取率トップでありながらあえて改革を行ったのはなぜでしょうか。
 
新規リスナーの獲得
聴取率調査の際に、聴取時間は分単位で記録されるので、聴取率を多く獲得するためには、聴取された時間を伸ばす必要があります。
聴取率は「聴取人数×聴取分数」で算出されますが、ラジオのリスナーの高齢化によって、その数は徐々に減っています。
既存リスナーの多くが60代で、年齢が若くなるにつれてリスナーの数はだんだんと減少し、10代のリスナーが一番少なくなっています。
既存のリスナーは大切な存在ですが、既存リスナーの声にばかり耳を傾けていては、新しい企画は生まれてきません。
それだけではなく、既存リスナーを大切にしすぎてしまうと、新しい企画さえも無意識に既存リスナーを意識したものとなってしまいがちです。
新しくリスナーを獲得して、これから先も長く多くの聴取率を得るためには、大きな変革が必要でした。
 
インターネットラジオ「ラジコ」の存在
各番組の編成がきちんと効果を出しているかどうか、リスナーに受け入れられているのかどうか、各番組の行う企画や演出がリスナーの評価を受けているかどうかを測る指標が聴取率です。
聴取率は、番組編成を考えるために使うマーケティングデータでもあります。
しかしながら、聴取率は1年間の間に6週間しか調査されず、調査結果も調査週から約1ヶ月後にわかるというのが実情でした。
これでは正確なマーケティングデータを取ることはできません。
そこで、インターネットラジオ「ラジコ」の出番です。
現在でも、普通のラジオ機器を使って放送を聴いている人の方が、ネットラジオを聴いている人よりも随分と多いです。
しかしラジコであれば、放送局側は、リアルタイムでリスナーの実数を把握することができます。
こちらで取れるデータの方が、聴取率で取れるデータよりもはるかに有効であることは明確です。
 
聴覚メディアの可能性
TBSラジオは2019年3月に、音声メディアの可能性を探求し、その成果を社会へと還元することを目的とした「Screenless Media Lab.」の設立を発表しました。
これは、情報過多となった現代社会における聴覚情報の有用性を研究し、視覚情報の過多を適切に切り下げて、視覚と聴覚のバランスを考えることを課題としています。
 

事業が好調なときにこそ次の一手を

変化の激しい現代において、事業がずっと好調であるという保証はどこにもありません。
一度事業が不調になってしまうと、そこから新しいことに取り組むことは大変困難です。行動が後手へと回ってしまう前に、変化をさせ、より一層事業の拡大をしていく必要があります。
大企業といえば、一見常に安泰なように見えますが、彼らは常に変化に対応し、事業を既存のものから変化させることで、厳しい競争社会を生き残り、大きくなってきたのです。
 

まとめ

何事も、変わらないままではいられません。
変化を恐れず、変化のタイミングを逃すことなく、時代の流れに乗り遅れないよう柔軟な思考を持つことが重要です。
会社というものは、常に変化をして成長していくものです。しかし、その変化の仕方を間違ってしまっては会社が成長することは難しくなるでしょう。
そのためには、物事を正しく見極める目が必要です。
事業が好調な時だからこそ、これからの会社のために新しいことを始めましょう。