代はさまざまなものがめまぐるしく変化していく時代です。
それに対応するために、経営者に求められるのは、いま何をやって、将来どういう手を打つべきかを見通す洞察力です。
先を考えて手を打っていく会社組織には本当の強さがあります。
企業が永続するためには、短期の業績アップも重要ですが、この先の3年、5年、10年、15年を見通して、どう手を打っていくかが本当に大切なことです。

 

時代の変化にどう対応していくか

時代の変化に対応するためには、市場や顧客のニーズの変化をいち早く感じ取らなければなりません。
「持続的な成長の実現」は、企業にとって大きな課題です。
それを可能にするキーポイントとなるのが「時代を先取りして自らが変革し続けることができるかどうか」ということ。
時代の「変化」に対して、今まで以上に求められるものは何か、それは組織の「自己変革力」にほかなりません。
そんな「持続的成長の実現」に取り組んだ二つの例を紹介します。

百貨店の例
百貨店ビジネスは時代を先取りして顧客ニーズを捉えてゆくことが持続的成長のうえで生命線です。
持続的に成長する企業を作るために、日本の百貨店と欧米の百貨店のビジネスモデルを比較してみましょう。
欧米の百貨店は自分で商品を仕入れて、リスクを背負って自分で販売します。
それに対して、日本の百貨店は、テナントが入ってもらうことが基本的なかたちになっています。テナントに商品を仕入れて売ってもらい、そこからマージンを取っています。
これまでは、2つのビジネスモデルの差をあいまいにしたまま人間が配置されていたため、無駄が多く生じていました。
それを見直して、商品についてはテナントに任せ、百貨店はお客様への対応に人員を集中させたところ、顧客満足度が上がり、業績アップにつながりました。
過去の実績や慣習にとらわれずに、お客様から何を期待されているのかをみんなで考えることで、どこに仕事の無駄があるかが見えてきて、改善につながったのです。
日本の百貨店のビジネスモデルが「テナント型」マネジメントが中心であることをよく認識して、新しいビジネスモデルや収益構造を確立していくことを大切にしたということです。

製造業の例
最近、製造業の企業が、モノの製造だけでなく、サービスの分野に進出する動きが活発化しています。
この背景には、世界に工業製品があふれるモノ余りの時代となり、顧客の求める価値が商品そのものから商品を使った問題解決(ソリューション)に移行したことがあると言われています。

ある機器メーカーでは、、社員を派遣して、顧客と一緒に機器を設置している現場でフォローアップし、改善活動を行いました。
その結果、「顧客とともに、現場で価値を創る」ことを学んできた人材には、常にユーザーサイドの立場に立ったビジネスを行う意識が芽生えるという変化が生じました。
ビジネス環境の変化に伴い、「モノの価値」だけで勝負するのではなく、「モノで実現するサービスの価値」で勝負することが重要になります。
ここで取り上げた取り組みは、持続的に成長する企業を作るためのヒントになるでしょう。

トップの意識を社内にどう伝えるか

将来を見通して、経営者が考えたことや経営方針について、重要なことは部下に繰り返し伝えるということが大切です。
経営者は、今何をやって、将来に対してどう手を打っていくかという方向性についても部下に伝える必要があります。
時代の変化に対して自分たちがどれだけ考えて手を打つか、経営者だけでなく、従業員の一人ひとりが、そういう問題意識をどれだけ持って現場を改革していくかが、企業の強さになります。
それには、現場の社員のニーズ対応力が鍵を握ります。
研修で現場の人間を集めてディスカッションをさせるなど、それぞれの立場の人がどう解決していくのかという問題意識を高める努力が不可欠になります。

会社の将来のために次世代をどう育てるか

どんなに立派な経営者がいても、会社の将来のために重要なことは次世代を育てることです。
自分だけですべて抱え込むのではなく、日々のマネジメントを通じて、自分の考え方を部下に繰り返し移し替えていくことです。
大切なのは言い続けることです。経営は難しいことではなく、どれだけ執念をもって同じことを繰り返すかで決まります。
「思い切って仕事を任せる」「小さなところから始めて、プロジェクトを任せたり、部署や支店を任せたりして、マネジメントの経験を積ませる」「人材交流」などのように、社員の自立を促すことが重要です。
個人の資質はもちろんありますが、若い世代に先を意識させる教育や、経営的な意識を持たせる取り組みを続けていくことが大切です。

まとめ

持続的に成長できる会社は、自己変革をやり続ける力がある会社で、最終的には「全員がリーダー」という意識が大事です。
今の日本に一番大切なのは、社員一人ひとりが自立することです。社員一人ひとりのレベルが上がれば、会社のレベルも上がります。
資本主義では、自分で決めて行動して自分で責任を取るというマインドが基本です。
経営とは考え続けることであり、すぐれた経営者には将来を見通す洞察力があります。
それは学び続けているリーダーが束ねる組織の自己変革力につながるのではないでしょうか。