営に当たって一つの助けになるのがランチェスター戦略です。
中小企業のように経営資源が限られていても、市場で勝利を収めるための知恵が収められているのがランチェスター戦略です。
ですから経営戦略や事業戦略を立てる上でぜひとも知っておくべきものです。
ここでは、ランチェスター戦略の基本的な考え方と導入するメリット、そして実際の活用事例を取り上げて、その効果を検証します。

 

ランチェスター戦略とは

ランチェスター戦略は、もともと軍事戦略の一つとしてイギリスで考案されたものです。
簡単に述べると、戦いに勝利するための「戦闘力」を計るものとして、「武器効率」と「兵力数」がポイントになるというものです。
それが現在ではマーケットで打ち勝つ経済理論として利用されるようになってきました。

この戦略で基本となる3つの軍事的な要素は、経済理論の中では以下のように置き換えられます。

戦闘力→利益につながる営業力
武器効率→技術開発力などの質的経営資源
兵力数→社員の数や設備などの量的経営資源

ランチェスター戦略には第一法則と第二法則の二つがあります。

第一法則は、主に局地戦や一騎打ちなどに当てはまる法則です。
別名「弱者の法則」とも呼ばれており、マーケットにおける弱者が市場でトップに君臨する強者に対抗するために有効な手段といわれています。
弱者は、量的経営資源(社員や設備)では大手企業に劣るため、局地戦のようなニッチな市場で勝負するか、技術や商品の質を高めるために経営資源を一点集中させて勝負する必要があるというものです。

対して第二法則は、広範囲の戦いを想定した戦略です。
別名「強者の法則」とも呼ばれており、量的経営資源が豊富な強者は、広範囲な戦い、つまり全国展開するような大きな市場で圧倒的に有利に戦えることを示しています。

どちらの法則も経営資源を上手に活用することが大事ですが、大きな市場になればなるほど量的経営資源を豊富に持つほうが有利であるとされています。
逆に小さな市場においては、量的資源が限られていたとしても、技術力や商品力で優位に立つことが可能なことも教えています。

中小企業がランチェスター戦略を導入するメリット

ランチェスター戦略の中でも、特に第一法則は中小企業にとって役立つものです。
大手企業のように多くの社員や設備を有していないとしても、「局地戦」のような小さな市場であれば、十分に技術力で勝負できることを教えているからです。
また広くどの人にも受け入れられる商品よりも、地域的なニーズに沿った製品開発などで「局地戦」に持ち込む必要があることも教えています。

現在のマーケットの動向を見ていると、ニッチな市場が増えていることが分かります。
顧客のニーズは多様化しているため、ランチェスター戦略における「局地戦」が増大しているのです。
ですからランチェスター戦略を導入することで、中小企業でもマーケットで勝利を収めて大きなシェアを獲得するチャンスが広がっているのです。
また、シェアを獲得できれば価格設定においてもイニシアチブをとることができるので、利益率を上げるという点でも優位に立てます。

中小企業がランチェスター戦略を導入する際のポイント

ランチェスター戦略を中小企業が導入する際に注意すべきなのは、大企業とは戦い方が違うことを忘れないことです。
大企業と同じ土俵で戦えば、量的経営資源で圧倒的に強い大企業が優位なのは間違いのない事実です。
ですから「差別化」を図って大手が参入しない小規模なマーケットに、「一点集中」して顧客を開拓するのが大切なのです。
そのためには地域に特化した商品の開発や、顧客を徹底的に分析して一部の特定の層に向けた商品を作り出すことが必要です。

ランチェスター戦略を生かした事例2選

1. セブンイレブン
セブンイレブンといえばコンビニ最大手の大企業です。
しかし、過去を振り返ってみると、セブンイレブンの創業時の小売業界では、スーパーマーケットが絶対的な強者として君臨していました。
そこでセブンイレブンがとったのは「弱者の法則」で、他社との差別化を図る事でした。
POSシステム(販売時点情報管理)や共同配送など、質的経営資源を充実させることで戦闘力を高めました。
またまだ関西で知名度が低かった時代には、「一点集中」で大阪に多くの店舗を一気に開店させることで顧客を獲得することに成功しました。
結果として現在では、スーパーマーケットを凌駕する小売業界のトップの座に就くことにつながったのです。

2. 株式会社HIS
大手旅行会社のHISもランチェスター戦略によって大きな発展を成し遂げた企業の一つです。
当初は大阪と香港という2か所に営業拠点を設けており、「一点集中」で経営資源を投入し成功を収めました。
また「差別化」を図って、大手旅行会社が手を出さない、まだそれほど知名度の高くないリゾート地を中心にしたプロモーションを行い、ニッチな市場でのシェアを獲得して拡大していったのです。
弱者の戦略を選択することで企業規模を拡大していった事例といえます。

まとめ

ランチェスター戦略は、多くの成果を生み出している、効果が実証された経営戦略の一つです。
2つの事例を見ても分かるように、弱者であっても、ランチェスター戦略を適用することで強者へと変貌していくことが可能です。
顧客ニーズの多様化は中小企業にとっては大きなチャンスです。ニッチ市場で優位に立てば、さらに大きな市場へと展開する力を得ることができます。
そのためのカギは、ランチェスター戦略に基づいた経営戦略をしっかりと立てることなのです。