売上は会社の力を示す指標の一つとして重要性の高い数字の一つです。
売上アップを最重要課題に置く経営者もいますが、本当に第一にすべきなのは、売上アップだけではありません。目標数値の設定や、キャッシュを常に十分に保持する重要性についても忘れてはなりません。
なぜ売上だけにこだわるべきでないのかを実例と共に考察してみます。
売上アップの重要性を考える
会社が順調に成長するためには売上アップはかかせない重要なポイントだと考える経営者は多くいます。
確かにこれは事実であるとも言えますが、すべてではないとも言えます。
なぜそう言えるのでしょうか。
売上は文字通り何かの商品やサービスを販売したことになるので、会社の利益と関連のあるものです。
しかし「売上が多い」からと言って必ずしも「利益が多い」わけではないのです。売上が多くても倒産する企業があるという事実は、そのことを示す実例です。
例えばダイエーについて考えてみてください。ダイエーと言えば、小売業界ではトップクラスの売上高を誇っていた日本の一大企業です。実際、総売上高6兆円という規模でしたが経営難に陥り、現在はイオングループの完全子会社となっています。
もう一つ別の例も考えてみてください。田舎の雑貨や駄菓子を扱う個人商店は、売上高でダイエーと比較すれば微々たる数字ですが、数十年以上倒産せずに経営を続けている店も少なくありません。
ですから売上だけが経営の順調さを示す指標ではないのは明らかです。
ではこの違いはどこから来るかと言えば、経費の違いです。売上アップは重要ですが、そのために経費をかけすぎるなら経営は立ち行かなくなります。
この二つの例から分かる教訓は、売上高だけで経営を判断することはできないという事です。
では売上アップは経営に重要ではないのかというと、そうは言えません。
働き方改革やグローバル化が進み「外敵」が増えている現在の産業界の状況を考えると、やはり売上拡大のために手を打ち続ける事は必須事項です。
会社経営は川の流れに逆らって上流に進む船のようなものです。成長を目指した努力を辞めてしまうなら、下降するだけなのです。
ですが、先ほども考えたように売上アップだけを目指すとするなら、経営の大事なポイントを逃してしまう可能性もあります。ですから売上アップ以外の重要性の高いポイントもおさえた経営を行っていく必要があるのです。
重要性を持つ売上以外の部分とは?
売上アップは必ずしも最重要項目ではない事を考えましたが、「目標売上を持つ」ことには重要な意味があります。
目標を持つと、それに向けた努力を具体的に行う事ができるようになります。
経営者や社員の決断や行動は、「目標をどのように設定するか」で変わってくるわけです。
ですから、アバウトでも構わないので目標売上を前面に掲げて、それに向けた努力を全社的に行う事は、成長に大きく影響する事柄なのです。
ただし忘れてはいけないのは、目標売上は数値だけではなく、それを達成するために何をする必要があるのかという計画段階まで提示することが必要だということです。目標売上という「目標地点」だけでなく、それに至る「里程標」を設置してあげなければ、社員は努力の方向性を失うからです。
売上以外の重要性を持つ部分として、キャッシュの存在を忘れてはなりません。キャッシュは何か生じた際にすぐに動かせる資産です。
会社経営においてキャッシュの重要性は以前にも増して大きなものになっています。
なぜなら市場の流動性や不確実性が増している近年では、素早く商機を見分けて投資した経営者が勝ち組になっているからです。
つまり、必要な時にすぐに投資できるようにキャッシュを多めに保持していることが成功への大きな条件なのです。
必要な時がきたら借金をすればよいと考える経営者もいますが、必要な時に即日で費用全てを用立ててくれる金融機関がどれほどあるかを考えれば、キャッシュを保持する重要性はすぐに理解できるはずです。
もう一つ重要なポイントは、業務効率化を進めて経費を押し下げる事です。
売上が高くても経費がそれを上回れば破綻が待っています。ですから「利益率を上げる」事は重要性の高いポイントです。
不採算に陥っている事業も、経費を圧縮する事や業務効率化を推し進める事で利益を生み出すものとなることがあります。
同時に利益率だけでは事業の重要性は判断できません。利益率が高い効率の良い事業でも、生み出される経常利益が少ないなら、会社への貢献の少ない事業になります。
ですから目標とする経常利益を掲げておくのも重要性の高いことです。
目標売上を持つことの重要性を先ほど考えましたが、経常利益の点でも目標を持つことは不可欠です。
経常利益に関する具体的な目標を持つならば、売上アップと共に業務効率化による利益率アップにも社員は取り組むようになります。こうして非常に「燃費の良い経営」が行われるようになるのです。
ですから社員に対して常に具体的な「数字」を掲げる事ができる経営者は、成功に近いポジションにいると言えます。
売上高は必ずしも会社の力や経営の順調さを裏付けるものではない事は考えてきたとおりです。
しかし、目標として売上アップを数値化して掲げる事は重要性のあることです。
売上は経常利益や利益率と共に語られるときに重要性が増すのです。
また、キャッシュについて常に経営者が把握しておくことも重要性の高いことです。
「売上高・経常利益・利益率・キャッシュ」に関する数字は、経営者として常に意識しておくべき重要性の高いデータです。これらの数字に関する具体的な目標を掲げる事で、利益を上げられる会社へと成長していく事が可能になるのです。