生産性の向上とはどういうことか?

生産性向上は企業にとって至上命題とも言えるものです。生産性が向上すれば、利益を上げるより良い土壌が形成されることにつながるからです。
しかしそもそも「生産性向上」とはどういうことなのでしょうか。
そのメリットや必要性を認識していなければ、真の意味での生産性向上を図ることはできません。
まず、生産性向上の意味と必要性を考えていきましょう。

「生産性向上」とよく一緒に使われるのが「業務効率化」というワードです。
しかし、両者には明確な違いが存在します。
企業にとっての「生産性向上」とは、無駄がなく、少ない時間で最大の成果を上げることです。
言い換えれば、「費用対効果」が高いこととも言えるでしょう。
そのためには、より成果を上げやすい業務を見極めて、そこに資産や時間を投下することが必要です。
これに対して「業務効率化」とは、既存の業務をよりスピーディに安価に行うことです。
ですから、「業務効率化」は「生産性向上」のための一つの手段ですが、イコールの関係ではありません。
まとめてみると、生産性を向上させるためには、業務のどの部分に注力するかを見極めて、その分野の業務効率化を図ることが必要だと言えます。

生産性の向上が至上命題なのはなぜか?

次に、なぜ今「生産性向上」を図る必要があるのかを考えてみましょう。
一つめの理由は、日本全体の労働人口の減少が予想されるからです。減少する労働力を補いつつ収益を高めるためには、生産性の向上が絶対に不可欠と言えます。

もう一つの理由は、働き方改革です。
労働力が減っているという状況に加えて、長時間労働の是正や非正規雇用の抑制などを柱とした「働き方改革」が政府によって推し進められています。こうした取り組みには、過労死やうつ病などを抑制する点で大きな価値がありますが、企業サイドからすると、一定の変化が求められているのは事実です。残業の代わりに生産性向上による効率化を図るのは、どの企業にとっても喫緊の問題なのです。

あと一つの重要な理由は、グローバル化による競争激化です。中国や東南アジアなど人的コストの安い国の製品が日本にも多く流入してきています。そうした製品に対抗するためには、生産性向上がどうしても必要になってきます。

具体的な生産性向上に役立つ4つのポイント

ここまで、企業にとって生産性向上が避けては通れない問題であることを考えてきました。そこで浮上するのが、「どうすれば生産性は向上するのか」という点です。
そこで、ここからは生産性の向上に役立つ4つのポイントについて考えていきます。

①補助金や助成金の導入
生産性を向上させるために、国や自治体が行っている補助金や助成金を活用することができます。
たとえば、IT機器やソフトウェアを導入することで生産性を大きく向上させることができるとします。そうしたケースで活用できるのが、中小企業や小規模事業者を対象にした「IT導入補助金」制度です。対象となるのは、一定規模までの中小企業や小規模事業者で、定められたITソフトウェアなどの購入に対して補助がなされます。

人事関連の助成金も見逃さないようにしましょう。
たとえば、「人材開発支援助成金」は、人材教育のための費用や、その間の賃金の助成などを行ってくれる助成金です。他にも「人材確保等支援助成金」や、社員の仕事と家庭の両立を支援する「両立支援助成金」などの、生産性向上に寄与する助成金制度があります。
労働力の減少が予想される状況ですので、人材確保と人事教育は生産性向上にとって非常に重要な分野です。経営者はこれらの助成金についてもしっかりと把握しておく必要があります。

②業務改善
最も簡単な業務改善の方法の一つは、整理整頓です。ここでいう整理整頓が目指すのは、「綺麗さ」だけではなく「仕事のしやすさ」と「効率の良さ」です。
整理整頓には、モノの配置を定めるだけでなく無駄なものを無くす取り組みが必要です。無駄なものがなければ、探す手間が省け、管理する手間も減ります。つまり社員一人当たりの時間効率が大きくアップするわけです。それに加えて仕事に集中しやすい環境づくりを行うことができるので、仕事の質も向上することになります。

また仕事の「見える化」も業務改善に役立ちます。
全員で仕事の状況や目標を共有することで、チーム全体の競争力や団結力を高めることができます。これは社員の意欲を高めることにつながるので、生産性向上には欠かせない取り組みです。
特に「見える化」に取り組む際には、成果や成長が見えるようにすることが大切です。「ノルマに追われる」社員よりも、「成長を楽しむ」社員の方が、より生産的で安定的に行動できるからです。

③無駄な時間を減らす取り組み
先ほどの業務改善の項でも考えたように、整理整頓によって無駄な時間を減らすことができます。それに加えて、パソコンを使うのであれば、ショートカットキーやより業務に適したプログラムを導入することで、無駄な時間をさらに減らすことができます。
そして、仕事を行う順番を定めるだけでなく、終える時間をしっかりと決めておくことにより、高い集中力で仕事を行うことが可能になります。

それに加えて、賢い経営者は「時間を買う」ことも考えなければなりません。
「生産性向上とは、より成果の上がる分野に注力すること」であると先ほど考えました。ですから、効果が上がりにくい分野に関しては、外注業者を上手に使うことで、より生産性の高い分野にマンパワーを集中させることが可能になるのです。
そうすれば社員の時間をより効率的で生産的なことに用いることができます。外注業者を使う費用は、「時間を買う」ために用いたと考えるなら決して無駄な費用ではありません。

④やる気アップで向上
無駄な時間を削るのは大事ですが、行き過ぎると社員のやる気をそぐことにもつながりかねません。適度な休憩や休暇は生産性の向上に不可欠です。
この点で残業を前提にした行動計画は、社員の集中力低下や離職率のアップにもつながるものであり、生産性向上とは逆行するものです。
社員は、「会社の歯車」ではなく「会社の資産」です。資産は大事に活用するべきものであることを忘れずにいなければなりません。
社員のやる気アップにつながるもう一つのポイントは、責任を社員に押し付けないことです。部下ではなく経営者が経営に関する責任を取る必要があります。経営上の失敗を社員に押し付けたり、それを責めるべきではないのです。
逆に、成果を社員と共有できる経営者であれば、社員のモチベーションは非常に高まります。生産性向上に関わる多くの部分は、実際に働く社員の働きによる部分が大きいと言わざるを得ません。
ですから社員のモチベーションを上げてパフォーマンスを上げることが、効率化と生産性の向上の大きな鍵となるのです。

生産性向上で安定した経営が可能に

変化の激しいビジネス界にあっては、生産性向上は常に課題となるものです。
経営者が自らの目で現状を知りチェックすることはとても大切です。経営者として部下の動向や働く環境を知らないとすれば、適正な生産性向上は望めません。
そして、生産性の向上を意識しない会社は淘汰される運命にあります。
社員教育や人材育成によって生産性の向上が望めるので、「会社の資産」である社員を有効活用する方法を常に念頭に置いて経営を行いましょう。
そのようにすれば、時代の変化にも対応できるスキルの高い社員を育てることができ、状況や時代が変わっても安定した経営を行っていくことができるのです。