本的経営、いわゆる年功序列・終身雇用・企業別組合が特徴の会社の時代は、もう終わりを告げるのでしょうか?
ここでは、これまでの日本的経営の特徴や、そのメリットデメリットなどについてご紹介します。

 

日本的経営の特徴とは

年功序列

年功序列とは、社員個人の能力または実績などを評価の基準として給与に反映させるのではなく、その人の年齢や勤続年数に重きを置いて、給与のみではなく役職も引き上げる人事制度のことです。「年功序列型賃金」「年功賃金」とも言います。
年功序列制度は、長く働き、年齢が上がるほど、個人の持つノウハウやスキルが高まり、会社に貢献するという考えからできたシステムと言えます。

終身雇用
終身雇用とは、企業に正社員として入社した場合、定年まで雇用されるという雇用形態です。
企業にとっては労働者を定着させることができる、労働者にとっては安定した収入を確保できるというメリットがあり、明治の頃に確立されました。
法律として存在するわけではありませんが、日本では多くの企業で行われてきました。

企業別組合
企業別組合とは、企業ごとにそれぞれの従業員だけを組合員として組織する労働組合のことを言います。
欧米では企業の枠を越えた産業別の組合が交渉を行うことが一般的であるため、企業別組合は日本的経営の特徴とされています。

 

日本的経営のメリット

年功序列のメリット

働く側にとって年功序列制度は、年を追うごとに賃金が増し、ある程度の期間働くことでさらに上の役職につけることが約束されているという大きなメリットがあります。
それだけではなく、年功序列制度を導入している会社の離職率は低く、長く同じ会社で働くことで会社への帰属意識が高まります。
勤続年数が長ければ、社員同士が業務に関して協力し合う機会も増え、お互いが信頼し合い連体感が強固になります。
年功序列を導入していると、教育結果を把握しやすくなり、その成果を生かして教育システムをより良いものへと常に変化させていくことができます。
部下に自分のポジションを奪われる心配も、先を越される心配もないので、上にいるものは憂いを持つことなく部下の教育に力を入れることができるのも大きなメリットと言えるでしょう。

終身雇用のメリット
終身雇用のメリットの一つに、社員を長期的に育成していくことが挙げられます。社員教育にはお金がかかるものですが、社員が会社を去ることがないとわかっていれば、多くのコストを費やしたとしても、それを取り戻すことは十分可能です。

そしてもう一つのメリットは、経営者と労働者の間で信頼関係を作り上げることができることです。労働者がクビにされたり、昇級できなかったりという不安を抱えることがなく、安心して働く環境を提供することによって、経営者は信頼を得ることができます。
労働者が経営者を信頼することによって、優秀な人材を定年まで確保することが可能となります。

企業別組合のメリット
欧米型の職能別労働組合とは違い、日本の企業別組合の団体交渉では、会社に対してあまりにも無理な要求は行いません。
これは、労働者側と経営側の双方が、社内の事情を踏まえたうえで話し合いを行うからこそできることです。

 

日本的経営のデメリット

年功序列のデメリット
年功序列の第一のデメリットは人件費の高騰です。どの社員の賃金も上がっていくことが確定しているため、たとえ従業員の数が少ないとしても、年を重ねるごとに賃金は増えます。
それだけではなく、能力に関係なく賃金が増えていく年功序列は、社員のやる気を失わせる危険があります。年功序列制度では、能力を磨きさらなる高みへ昇ろうと自分を鼓舞させる必要はないわけです。目的を持たない人に、やる気は備わりません。
このやる気はまだ若い社員にこそあるべきものですが、自分がどれだけ実績を上げたとしても、賃金が上がるわけでもなく出世をするスピードが早まるわけでもない。そういった環境にずっと置かれていると、やる気をなくしてしまいます。
そうして、事なかれ主義的なスタンスで仕事をするようになっていくのです。

終身雇用のデメリット
終身雇用のデメリットで一番大きなものが、雇用に流動性が生まれないというものです。そうなると、個々の社員がよりその能力を発揮できる場所に移動できなくなり、会社にも変化が生まれにくくなります。
そして、定年までレールに乗っているだけで大きな変化はないとわかっていると、社員は向上心を維持することが難しくなります。これは年功序列と同じですね。

企業別組合のデメリット
企業別組合のデメリットは、同種産業や同業他社の動向から切り離し、労使交渉を行われる可能性があるということです。欧米型の職能別労働組合との大きな違いがそこにあります。

 

時代の変化の中で日本的経営はどう変わるのか

2019年4月に、経団連の会長が「企業が今後終身雇用を続けていくのは難しい」と述べ、雇用システムを変えていく方向性を示したことが話題になりました。
経団連の会長が発言した通り、時代が変わった今、これまでのような日本的経営を続けることは困難です。企業はそれぞれ変化に対応して、経営方法を変えていかざるを得なくなるでしょう。
何もかもを欧米風にする必要はなく、これまでずっと続いてきた日本的経営の良い部分は残し、経験と知識をこれからに生かしていくことが求められます。

 

まとめ

日本的経営には、メリットもデメリットもあることがわかりました。
日本的経営の根本に根付いているものは、日本人の価値観であるように思われます。これからの時代の波に負けないように、メリットは取り入れ、デメリットは別のものへと変更していく、柔軟な思考が大切になるでしょう。