会社とはいったい誰のものでしょうか。
もちろん、会社はまずは経営者のものです。
しかし、会社は経営者一人で成り立っているのではありません。 社員一人ひとりが自分の持ち場で働いて利益を出すことによって、会社は存続し、発展していくことができるのです。
しかし、残念なことに、社長の会社に対する思いと、社員の会社に対する思いには大きな違いがあるのが実際のところです。
ここでは、社員の会社に対する当事者意識を高めて、強い組織を作っていくにはどうしたらよいのかを考えていきます。
社員にもいろいろなタイプがいる
一口に社員と言っても、会社に対する関わり方にはそれぞれ違いがあります。
よく20対60対20の法則などと言いますが、社員の意識も大きく三つのタイプに分かれます。
一つ目は、仕事に対して自分から積極的にコミットするタイプ。
このような社員は、もともと意識が高く、上司が特に注意しなくても、仕事の中に自分で課題を見つけて積極的に関わっていきます。
仕事上で何かトラブルがあった場合にも、自分がきちんと対応して解決しようと試みます。
積極的に関わる分成果も上げるので、昇進や昇給も早く、よいサイクルの中で会社の貴重な戦力になります。
20対60対20の法則で言われるように、全体の20%しかいないこのタイプが利益の80%を生み出します。
このタイプの当事者意識を大切にして、仕事面や報酬面で応えていくことが、経営者には求められます。
二つ目は、 仕事に対して受動的に関わるタイプ。
自分から積極的に手を上げて仕事を作ることはしませんが、指示された仕事はこなします。
周りの人からはみ出すことは避けようとするので、リーダーシップをとることはありませんが、社内の空気を壊すようなことはありません。
この二つ目のタイプが社員の大多数であるのが一般的です。
三つ目は、仕事に対して後ろ向きなタイプ。
仕事をやらされているものと感じており、 できれば避けて通りたいと考えています。
このようなタイプは、たとえば今期の売り上げが目標に達しなかったときに、
「 そもそも目標設定に無理があったんだよね」
「なんだか営業所内に活気がないなあ」
「 こんな商品しかないから他社に対抗できるわけがない」
などというような、まるで他人事のような言い方をして平気でいます。
仕事に対して当事者意識が持てないでいるのです。
このようなタイプが増えると、社内の雰囲気が悪くなってしまいます。
会社を発展させてゆくためには、このような社員の会社に対する当事者意識を高め、仕事を自分のこととして取り組んでいくように育てることが不可欠です。
社員の当事者意識を高めるためにはどうしたらよいのでしょうか。
この場合、まずは二つ目の受動的なタイプの意識を変えることを考えましょう。
三つ目のタイプの意識を高めることは難しいですが、二つ目のタイプは、社員のがんばりを認め、社員の目線に立って仕事の意義を伝えていけば、当事者意識を育てていくことができます。
二つ目のタイプの意識が変われば、それに引っ張られる形で三つ目のタイプにも変化が表れるでしょう。
社員の当事者意識を高めるには
会社で働くことで得られる成長に気づかせる
確かに、会社は社員のものではないので、社員に会社に対して100%コミットしろというのは無理な要求です。
しかし、社員は生活の多くの時間を会社で過ごし、仕事に費やしています。
仕事とは、単に報酬を得るための手段ではなく、仕事を通してスキルを磨き、人とつながり、社会に貢献できる場でもあります。
仕事を充実させることが自分にとってもプラスであることに気づけば、社員の意識も変わっていくでしょう。
ただ、現在は上の立場から「仕事はおもしろいぞ」と言って伝わる時代ではありません。
社員と同じ目線に立って、社員自らが気づくことができる場を用意しましょう。
チームワークのおもしろさを伝える
会社とは組織です。さまざまなタイプの人が集まり、それぞれの仕事をすることによって大きな目標を達成します。
組織で仕事を行うのは、チームを組んで仕事をすれば、個人では達成できない大きなことができるからです。
しかし、ただ組織に所属していることに安住して、 組織に所属していれば安心だと考える人もいます。
そういう人は、自分では何もしなくても給料がもらえる場だと会社のことを考えているのです。
しかし、組織とはただ個人が寄り集まっていれば成り立つものではありません。
組織を構成している一人一人が、組織に対して自分の力を提供し、より良くしようと心がけることによって成り立っているのです。
何か問題が起こったときに、組織を構成しているメンバーが、「誰かが何とかしてくれるだろう」と思うか、「少しでも事態が良くなるために自分には何ができるだろうか」と思うかによって、組織の向かう先は大きく変わってきます。
組織のために働くというのは、自分を犠牲にして組織に捧げるということではありません。
他のメンバーと力を出し合うことで、自分1人ではできなかった経験をし、人とのつながりを作ることで、自分の人生を充実させることなのです。
仕事を通してそういう経験をすることができれば、社員の意識も変わっていくでしょう。
やらされ感をなくす
人は自分で選んだことであれば納得して動けるものです。
トップダウン方式でやるべきことが降りてくると、社員はそれをこなすことが仕事だと考えてしまいます。そのような状態では、仕事に対してやらされている感を持ってしまうでしょう。
社長が強いリーダーシップを持っていたとしても、すべて自分が決定して社員はそれに従うだけであれば、当事者意識を持つことは難しくなります。
いつもトップダウン方式で業務を進めるのではなく、社員に任せるべきことは任せていきましょう。そうすることによって、 社員は仕事を自分のこととして考えるようになり、当事者意識が育っていくのです。
まとめ
強い組織を作り、社内を活性化するためには、社員一人ひとりが自分の仕事に当事者意識を持って取り組むことが欠かせません。
しかし、上の立場の者が一方的に「当事者意識を持て」と言っても、 いたずらに反発を招き、ますます社員のやらされている感を強めることになりかねません。
仕事をすることが社員本人にとってもプラスであることが自ら理解できるように、社員と同じ目線に立って当事者意識を育んでいくことが経営者には求められています。社員の当事者意識を高めて、強い組織を作っていきましょう。