近は働き方の多様化が進み、フレックスタイム制の導入や非正規雇用の採用拡大なども増えてきました。一つの企業の中に、立場や働き方が異なる社員がいることが一般的になりつつあります。
そういった中で業務の効率化をはかり、生産性を向上させていくために、以前にも増して必要とされるようになっているのが社内コミュニケーションです。
今回は社内コミュニケーションの重要性を確認しつつ、コミュニケーションを活性化するための具体的な施策を紹介します。

 

社内コミュニケーションがうまくいかないとこんなデメリットが

HR総研が以前行った調査によると、「コミュニケーション不足は業務の障害になるか」との問いに対し、9割以上の人事担当者がYESと答えています。
また「社内のコミュニケーションに課題があると思うか」との問いに対しては、全体の7割以上の企業が自社のコミュニケーション環境に対して課題がある、と答えています。
このことから、社内コミュニケーションの重要性はわかっていても、自社ではうまくいっていないと感じている企業が多いことがわかります。

それでは、社内コミュニケーションが不足していると、どのようなデメリットがあるのでしょうか。
業務の効率化や生産性向上を目指すとき、職場全体での情報の共有は重要なポイントとなります。
しかし、社内での情報のやり取りや部署同士の連携がうまくいかないと、業務に支障が出てしまいます。

また、人間関係そのものがスムーズでない場合、個々の能力を十分に発揮できず、働き続ける意欲も低下していきます。

労働政策研究・研修機構が2012年に公表した調査結果によると、職場でのメンタルヘルス不調者が現れる原因の第2位に、職場の人間関係が挙げられています。
もし、社内コミュニケーション不足のため休職者や離職者が増加すれば、企業の生産性も大幅に低下してしまうでしょう。

社内コミュニケーションがうまくいかない理由

では社内コミュニケーションがうまくいかない理由は何でしょうか。

まず考えられるのは、上司と部下、経営者と社員などの上下関係の中にある問題です。
会社の社風が縦社会の閉鎖的な社風だと、下の者はなかなか意見を言いにくいということがあるかもしれません。
上司が部下に対して不用意に心理的な圧力をかけたり、上司の主観で部下を評価したりといったパワハラまがいのことがあっては、スムーズなコミュニケーションは図れません。

反対に、同じ部署の社員同士や役員同士のような横の関係については、コミュニケーションが図りやすいと思われがちです。
しかし、横の関係は常に比較される者同士とも言えるので、強いライバル意識が芽生えるとコミュニケーションに弊害が出てしまう結果にもなりかねません。

一方で、仲間意識が強すぎるのも、気持ちに緩みが出てミスが増えたり、刺激に乏しいため新しいことへの挑戦意欲が湧かなかったりして、マンネリ化による弊害が起こることも考えられます。

もうひとつ、自分とあまり接点がない部署や役職の人たちへの潜在的な無関心も、社内コミュニケーションを妨げる要因だと言えるでしょう。
こういった無関心が、他部署に対しての非協力的な態度につながったり、社内連携を妨げたりすると、トラブルも増え、顧客からのクレームの増加にもつながってしまいます。

社内コミュニケーションが活発になることのメリット

は、社内コミュニケーションを活性化したら、企業にとってどのようなメリットがあるのかを考えてみましょう。

社員同士のコミュニケーションが活発で、個々の人間関係が円滑になってくると、業務分担や情報の共有もスムーズになるため、業務の進捗状況が把握しやすくなります。
そうすると、速やかに協力体制を整えることが可能になり、業務の効率化や生産性の向上が期待できるでしょう。

また、社員同士の信頼関係が深まることで社内の雰囲気も明るくなります。

社内の風通しが良く意見を言いやすい職場は、社員の満足度を向上させ、離職率低下へもつながるでしょう。

社内コミュニケーションを改善するための施策5選

社内コミュニケーションの改善策として、ここでは5つの施策をご紹介しますします。

社内SNS
ビジネス用に仕様を整えたSNSを、社内SNSといいます。代表的なものにチャットワークなどがあります。
同じ空間にいなくても、会話をするように気軽にコミュニケーションが図れるという利点があります。リアルタイム性が強いので、情報の共有化という面でも大変便利です。

社内FA制度
在籍年数や成績など、一定の条件を満たした社員が、自身が希望する部署に自分を売り込んだり、他の部署からスカウトを受けて異動することができる制度を社内FA制度といいます。
社員が自主的に異動できるので、モチベーションの向上が見込まれるとともに、組織の活性化を図ることもできます。

コミュニケーション費の補助
社内でのコミュニケーションの費用を会社が負担するのは、従来は社員旅行などのイベントを対象とするのが一般的でした。
しかし、近年、部署の飲み会や、上司と部下の一対一の飲みの場の費用を補助する企業が増えています。
このようなコミュニケーション費用を企業が補助することは、福利厚生を充実させつつ社内コミュニケーションの活性化も後押しできるという点で、優れた施策と言えます。

飲み会や食事会の費用を企業が出す必要があるのか、という意見もあるかもしれません。
しかし、社員同士が知り合う場を設け、コミュニケーションを図る機会を企業がサポートすることは生産性の向上にもつながるので、最終的にはその企業の大きな資産となって返ってくると言えるでしょう。

社内カフェの設置
仕事を効率よく進めるには、適度な休憩を取って気分転換を図ることも必要です。
社内カフェはそのようなちょっとした気分転換にはもってこいの場所と言えるでしょう。リフレッシュすることで仕事にメリハリも生まれます。
また、社員同士の交流の場としても社内カフェは有効です。社内にリラックスして語り合える場所があるということは、コミュニケーションの質を高めるためにとても有効です。

フリーアドレス
社員が会社の中で個々に自席を持たず、図書館で過ごすように好きな席で仕事をする仕組みをフリーアドレスといいます。
部署や役職に関係なく、普段関わることの少ない人ともコミュニケーションをとる機会が増えることで、多様なつながりが生まれるというメリットがあります。
話す機会が増えることで新しいアイディアが生まれることもあるでしょう。

まとめ

社内コミュニケーションの不足は、生産性の低下や離職率の増加を招き、結果として企業の組織運営や業務の運行に大きな障害を招きます。
円滑な社内コミュニケーションをすすめるにあたって障害となりやすいのが、風通しの悪い上下関係や適度な距離を保ちにくい横のつながり、また接点の少ない他部署との希薄な関係です。

自社の特性に合わせて、コミュニケーションを活発化させるための環境づくりに取り組んでいきましょう。