小企業は、事業承継がうまくいかず、廃業してしまうことが非常に多いと言われています。
世の中の9割が中小企業である日本の社会にとって、これは大きな問題です。
そこで、日本の中小企業が事業承継は難しいと言われる現状を打破するため、今回は会社を子供に継がせることへのメリットや子供が事業継承をする際に大切なことをお伝えします。
この記事を読めば、子供に会社を継承させる選択肢のメリットを感じられるでしょう。

 

会社は自分の子供に継がせるのがベスト

事業継承を考える上で、まず選択肢に上がるのが、自分の子供でしょう。
その一方で、子供に継がせることを躊躇する経営者もいます。
「自分の子が優秀でないから」「社員に認められるか不安だから」など色々な意見があるでしょう。
しかし、自分の会社を子供に継がせることは、メリットだらけなのです。

金融機関とのつきあいに有利
当たり前ですが、金融機関は貸したお金を返してもらわなければいけません。
社長が経営から退き、今まで社員だった人を新社長にする場合と、子供を新社長にした場合では、金融機関の付き合い方が異なってきます。
子供が新社長に就任する場合は、財産を担保にして貸付金を保全できます。金融機関も安心して今まで通り(もしくはそれ以上)の貸し付けができます。
そのため、金融機関とのつきあいは子供を社長にした方が有利なのです。

社員も血縁ならしかたないと納得する
経営者の中には、「子供だから会社を継がせたで社員が納得できるのか?」と考える方もいます。
しかし、同じ社員が社長になると、いくら優秀であったとしてもおもしろく思わない社員も出てくるものです。
他の役員や従業員などに、後継者をしっかり周知し、取引先や金融機関などに紹介しておけば、社員は、血のつながらない役員よりも子供に継がせたほうが「血縁だから仕方ない」と納得するので、無駄な社内亀裂を生みません。

子供に事業承継するときに大切なこと

後継者の決定状況を調べた日本政策金融公庫総合研究所「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」(2016年2月)によると、社長の50%が自分の代で廃業予定と答えています。
もちろんこの中には「当初から自分の代でやめようと思っていた」と答えた経営者もいました。
しかし、「子供に継ぐ意思がない」などの返答もあり、後継者に悩んでいる経営者は少なくないのです。
では、子供に事業承継をする際には、どのようなことに気を付ければいいのでしょうか。

子供に会社を継ぎたいと思わせる
いくら親が「会社を継いで」と願っても子供は聞きません。
だからといって、親の考えを無理やり通し、継がせることは、子供の人格を無視していることにもなります。そのようなやり方で上手くいくわけがないのです。

子供に会社を継ぎたいと思わせるには、会社に引き継ぐだけの魅力があることを第三者に言ってもらうのが一番効果的です。
子供にとっては、身内である親への評価はどうしても厳しくなってしまいがちですが、周りから言われることで、本当の会社の価値が子供にもわかるのです。

子供が複数いるときは1人にのみ継がせる
子供が複数いた場合、
「子供は全て可愛い。だから全て対等にする」
「相続時に子供たちが遺産分割で揉めることがないように」
と考えるのは自然なことです。

しかし、会社の株を分けてしまうと後々問題が起こる場合があります。
仮に息子が3人いたとしましょう。長男を後継者にし、株を三等分しました。しかし二男、三男が結託することで長男を社長の座から降ろすこともできるのです。

このようなことが起きないように、会社の経営・株式は1人に継がせるようにしましょう。
他の財産を他の子供で分けるようにすることで、遺産分割で揉めることを回避できるので、子供の不満が出ないように遺言書を作ることや、すべての子供に事前に説明をするなどして対応しておきましょう。

武者修行に出してそこで失敗させる
失敗の体験がない人間は成功しません。そのため、子供が会社を継ぐことをOKした際には、事業承継する前にそれなりの体験を武者修行でさせておきましょう。

経営者には、失敗がはできない局面が多々ありますが、武者修行中であれば、知識や経験として蓄積されます。そしてその失敗から学んだことが経営者になった際に生きてきます。

しかし、その場合、武者修行先に取引先を選ぶのはNGです。武者修行中とはいえ、未熟な姿をさらしてしまうのは、子供にとっても取引先にとってもマイナスになるでしょう。取引先は、将来の社長という肩書に気を使い、対等な関係で働くことが困難になります。
武者修行は大切ですが、武者修行先も吟味し、子供にしっかり学んでもらいましょう。

事業承継は人間心理を無視してはいけない
事業を子供に継がせる際には、人間心理を無視してはいけません。これは何よりも大切なことです。
子供自身が「会社を継ぎたい」と思うに至った経緯や、会社に入ってきた際に子供が「これをやりたい」と思うことにしっかり耳を傾けましょう。そうすることで、事業承継は円滑にできます。

まとめ

会社は自分の子供に継がせることで金融機関のとの関係が有利に働くだけでなく、社員も次期社長について納得しやすくなります。
また、子供に事業継承する際は、継承者は一人にすること、株の継承も一人にすること、自社と取引の無い企業に武者修行に行かせることで失敗から学ばせることが大切です。
事業承継は、人間心理を無視しては成功しません。人の声に耳を傾けながら進めましょう。