「借金」と聞くとどういうイメージが浮かぶでしょうか?
借金はよくない、借金はできるだけしたくないと思うのが普通ではないでしょうか?
経営者であれば、できるだけ借金はせずに無借金経営を続けていきたいという思いがあるでしょう。
しかし、こと経営に関しては、借金はしたほうがよい、借金をしないほうがよくないという考え方もあるのです。常識とは逆を行く借金と経営の関係、そして、無借金経営の意外な弱点についてご紹介していきます。

 

借金は悪いこと?

「借金」に対して悪いイメージがあるのはなぜでしょうか?
日本人は一般的にお金に対して堅実です。
子どものころからお小遣いを使いすぎないように、お年玉は貯金するように、と言われて育ちます。
給料の中で生活し、借金をするのは住宅を買ったときの35年ローンだけ、という人が多いのではないでしょうか。

このような感覚は経営者の中にも広く根付いています。
そのため、会社を経営する際にも、借金はしないほうがいい、無借金経営こそが理想、と考えられてきました。「借金」というと、経営者にとっては、お金のコントロールができておらず、経営能力がないことを示しているようにとらえられてきたのです。
しかし、本当に借金をしない経営者が優れた経営者なのでしょうか?

「いい借金」と「悪い借金」の違いとは?

借金をしない、ということは、手持ちのお金の中で経営を行っているということです。
しかし、それは現在の財務力の範囲でしか経営ができないということでもあります。
もし有望な新規事業のアイデアが生まれたとしても、それを実行するだけのお金が会社になければ、事業を拡大することができません。それは成長のチャンスを逃してしまうということです。
変化の激しい今の時代の中では、それでは成長しないどころか事業が後退してしまうことにもなりかねません。

成長のチャンスがあるときに、必要なお金を借りて事業を発展させ、きちんと返済する。
それが「よい借金」です。よい借金は、生きたお金であり、会社を動かす血液となるお金です。

それでは、「悪い借金」とはどのようなものでしょうか?
悪い借金とは、会社を成長させることができず、資金繰りが苦しくなったためにお金を借りることです。
しかし、たとえ一時的にお金を借りてその場をしのいだとしても、本業を成長させることができなければ同じことが繰り返されるだけです。
無借金経営にこだわり、必要なときに資金を調達できなければ、結果的にこのような悪い借金につながってしまうかもしれないのです。

出資はマルで借金はバツ?

会社を経営するうえで、株主から出資してもらうのはマルで、銀行からお金を借りるのはバツというイメージもあるのではないでしょうか?
確かに、株主からの出資に関しては、金利や返済期限はありません。
しかし、株主に対しては大きな責任があります。出資してもらったからには、事業を成長させて、配当を払わなければなりません。会社が大きくなって利益が増えるに伴って、配当の金額も増えていきます。
銀行からの借金はどうでしょうか? 確かに返済の義務はありますが、利益が増えたとしても利息の額は同じです。ここぞというときに上手にお金を借りれば、結果的には低コストで大きく会社を成長させることができるのです。

銀行からうまく融資を受けるコツ

企業にとって上手に借金ができればいざというときに強い推進力になることがおわかりいただけたでしょうか。
では、いざお金を借りたいというときに、スムーズに銀行から融資をしてもらうにはどうすればいいのでしょうか?
売り上げが安定している企業であれば、たとえ無担保・無保証であっても融資を引き出すことは可能です。
スムーズに融資を得るには、銀行からの会社に対する評価を上げることがカギとなります。

銀行が会社を評価するポイントは何でしょうか?
まず1つめは、会社の経営方針や事業計画が妥当なものであるか。
2つめは、経営者がその計画を実際に貫徹できるかという実行力。
そして3つめは、社員が経営者の方針に従って事業をやり抜くことができるかということになります。

これらのことを銀行に伝えるためには、日ごろから銀行員とよいコミュニケーションを取っておくことが大切です。
業績がよいときだけでなく、悪いときも、定期的に銀行を訪問して、会社の状況を伝えるようにしましょう。
経営計画発表会に銀行員を招いたりして、経営者の方針が社員に行き渡っていることを積極的に伝えるのもよいでしょう。

また、手持ちの資金に余裕があるときにあえて借金をすることも効果的です。
銀行が重視するのは実際の返済能力です。融資をしてきちんと返済があった、その積み重ねが銀行から会社への信頼となります。
その信頼がいざというときに融資を受けるための大きな力となるでしょう。

無借金経営だけがいい経営ではない

無借金経営が、必ずしも理想的な経営でないことがおわかりいただけたでしょうか?
経営者にとって大切なことは、事業を成長させて、利益を生み出し続けることです。
そのためには、ここぞというときに、上手にお金を借りて、事業を拡大することが必要なのです。
経営者の常識と、一般的な常識は違います。
銀行のお金も上手に使うことがいい経営者の条件でもあるのです。