敗するプロジェクトでよくある原因が「計画倒れ」と呼ばれる現象。経営戦略を立案している段階では、担当者の間から有益なアイデアが生まれてきます。また、議論も活発に行われているので、あたかも成功への道筋が見えているように錯覚してしまうことも多いでしょう。しかし、実際には計画が行動に移されないまま終わってしまい、絵に描いた餅になるのです。いわゆるアイデアマンは、独創的な戦略を立てるためには欠かせません。しかし、アイデアマンしかいない組織だと、実行力をともなわないので現実的な効果を期待できないといえるでしょう。

 

思い通りにいかないプロジェクトとは?絵に描いた餅になる計画の例

アイデアは生まれるのに実行できない
たとえば、画期的なデザインのオウンドメディアによって集客を狙っていたとします。どのようなデザインで、どのようなキャンペーンを展開するかについては多くのアイデアが出ました。後は、メディアを開設して広報するだけです。ところが、いつになってもメディアを作るために動く人が出てきません。会議ではたくさん意見を出していた社員ですら、制作段階になると仕切ろうとはしないのです。このような状況が続けば、結局、オウンドメディアの開設自体が立ち消えになってしまうでしょう。

期待したように人が動いてくれない
ビジネスの成功を左右する要因のひとつが「人脈」です。顧客とのつながり、取引先との信頼関係などは企業を成長させるうえで欠かせません。経営において、どれだけ太い人脈をどこに持っているかは大切なポイントになるでしょう。そして、一部の経営者は取引先からの「新しいプロジェクトに出資してもいい」というような、甘い言葉を信じて計画を立てることがあります。もしくは、社員の「ずっとあなたについていきます」という台詞を鵜呑みにしてしまう経営者も少なくないでしょう。

ただ、本当に経営者が新しい動きを見せたとき、彼らが行動を共にしてくれる保証はありません。そのタイミングになってから「あのときはああ言ったものの」と態度を豹変させる人間はたくさんいるのです。せっかく、人脈をあてにして事業計画を立てても、本人たちがついてきてくれないのではプロジェクトを実行できません。この場合も、計画倒れのままビジョンをあきらめざるをえないでしょう。

予期せぬトラブルに邪魔される
企業経営では、すべてが順調に進むとは限りません。むしろ、予想もできないようなトラブルに進路を妨害されることが頻繁に起こります。仕入れ先が倒産したり、競合他社が強力な新商品を開発したりすると、急激に自社の売上が落ちることも考えられます。ときには、何の予兆もなかった事件のせいで、経営が計画倒れになることすらありえるのがビジネスの世界です。

たとえば、SNS上のインフルエンサーを広告塔にして新商品を宣伝していたとします。インフルエンサーの人気に便乗できる限り、商品の売れ行きは好調でしょう。ところが、インフルエンサーが不祥事を起こし、人気が急落してしまいました。インフルエンサーのSNSは炎上し、宣伝していた商品すらも批判されるようになります。このような状況になれば、これまでの宣伝方法は意味をなしません。商品のイメージが下がって売れなくなり、期待したほどの収益源には達しないでしょう。

計画倒れの原因はどこにある?課題を明確化して対処しよう

単に運が悪かっただけに見えるケースでも、計画倒れに終わる戦略には明確な原因があるはずです。よくある原因を踏まえておけば、失敗率を下げることは可能でしょう。

計画そのもののクオリティ
必要性もないのに突飛なアイデアを取り入れるなど、計画そのものの出来は成否に大きく関係しています。こうした失敗が起こりやすいのは、アイデア出しの段階からのブラッシュアップを伴わなかったケースでしょう。アイデアをたくさん出すことは大切であるものの、ひとつのアイデアを研ぎ澄ませてハイクオリティにするのも同じくらい重要な作業です。思いつきレベルの計画をそのまま実行しても、細かい隙が露呈してしまって成功には至らないでしょう。

責任者がいない
ひとつのプロジェクトを運営していくには責任者が必須です。誰に指示を仰ぎ、分からない点を確認すればいいのかが不透明だと組織は混乱します。また、「自分が責任をとりたくない」という気持ちが働くので、挑戦的な仕事をしたがる人間が現れません。その結果、既存の経営方式をなぞっただけの無難な計画に着地する傾向が顕著です。

リサーチ・準備不足
事業計画を立案する際には、リサーチと準備を怠らないようにしましょう。ターゲットにしようとしている市場で、強力なライバルがいないかを調べておかなくてはいけません。また、計画をよどみなく進めていくだけの人材やシステムが社内に備わっているかもチェックポイントです。十分な準備が整っていないにもかかわらず、計画を実行に移してもすぐに限界が露呈してしまうでしょう。

資金不足
ある事業計画を展開したとして、利益が生まれるまでには一定の時間を要します。その間に資金が尽きてしまうと、結果が出る前に計画をあきらめなくてはいけません。人件費やシステム開発費、仕入れの費用など、初期投資を正確に計算したうえで、余裕を持った資金調達を行いましょう。

現場に作業を指示できていない
タスクが明確化されていないと、現場の人間はどう働いていいか分かりません。新規事業を立ち上げ、これまでとは違った業務が増える際には、現場が混乱する傾向にあります。現場が迷いなく動けない以上、プロジェクトが大きな成功を生み出すのは難しいでしょう。

リスクマネジメントの欠如
成功の保証がない新事業に入れ込みすぎると、経営そのものが傾きかねません。まして、「取引先が口約束をくれた」などの曖昧な根拠で動くのは危険です。新しい事業計画を始動するにあたっては、リスクマネジメントもしっかりと考えましょう。最初は小規模で始めたり、別の収益源も切り捨てないでおいたりするなど、万が一の事態に備えておきます。

真剣さが足りない
プロジェクトに関わっている人間にやる気がなく、流されるまま事を進めても成功はできないでしょう。計画段階で妥協するくらいなら、実行しないほうが資金を守れるといえます。また、経営陣だけが盛り上がっていて、現場の共感を得られていない計画もリスクが少なくありません。全社員がプロジェクトの内容と必要性を理解してようやく、新事業へと取り組む価値が生まれるのです。

 

 

計画倒れにならない!企業を着実に成長させるポイントとは

PDCAサイクルを守る
絵に描いた餅の事業計画から脱却し、企業を前進させていくためにはPDCAサイクルを守りましょう。PDCAとは「計画(Plan)」「実行(Do)」「評価(Check)」「改善(Action)」の頭文字をとった言葉で、ビジネスの手法を意味しています。新しいプロジェクトを始めたとき、最初からいきなり上手くいくことは稀です。計画段階のミスや漏れが、実行段階になっていくつも出てくるでしょう。それらの課題を検証し、改善しながら動くからこそ、計画の精度は高まっていきます。

PDCAサイクルで意識するべき点は、何度も4つの工程を繰り返すことです。1度や2度巡回させただけで、劇的にプロジェクトが成功するとは限りません。しかし、何度もサイクルを回していくうち、従業員たちの業務が効率化されていきます。初期段階で見えた課題にも解決策が生まれ、成功への方法論が浮かび上がってきます。PDCAサイクルの全ての工程で手抜きせず、丁寧にプロジェクトを磨き上げていきましょう。

成功率が高まるまで準備を徹底する
新しい分野に参入したり、新商品を開発したりするときには、準備を徹底してから実行しましょう。経営陣にとっては素晴らしいアイデアに思えても、すでに強力な競合先がいる分野では大成功を見込めません。逆に、競合のいない分野であれば、小規模な事業であっても利益率を高めることが可能です。計画を本格的に始動するなら、ターゲットを明確化して勝算のあるマーケットを見極めてからにしましょう。

マーケティング戦略以外では、人材の確保も準備の一環に挙げられます。新規事業についてまったく知識のない人材だけで挑んでも、競合を打ち破ることはできません。経験豊富な企業と提携したり、従業員が戦力になるまで根気強く教育したりするのも選択肢に入ってくるでしょう。もちろん、これらの取り組みにはそれなりの時間を要します。準備をしている間にタイミングを逃し、ターゲットが失われてしまう危険も少なくありません。ただ、その場合は「もともと実現の難しい計画だった」との考え方もできます。

勢いだけで突き進んでしまうと、計画倒れになる可能性は高まります。それよりも、自社の課題を把握したうえで、早急に克服することはできるのか考えてみましょう。トレンドには鮮度があり、一定時期を超えると市場の魅力は薄まっていくものです。トレンドが廃れないうちに準備を整えられるようなら、新規事業を始めてみる価値があるといえるでしょう。

チーム全体で足並みを揃える
経営陣だけが張り切っていても、計画倒れは防げません。実際に新事業を現場で進めていくのは従業員にほかならないからです。従業員のモチベーションが低いと、予定通りにタスクはこなせません。また、従業員の中に経営戦略への猜疑心が芽生えているケースでも成功は難しいでしょう。新規事業を始めるときは、メリットや目標を従業員に伝えることが肝心です。そうやって経営陣への信頼が芽生えれば、従業員は今までになかった業務にも真剣に向き合えます。

そして、責任者を中心として一丸となれるような組織づくりを進めましょう。能力はもちろん、人徳やリーダーシップなども踏まえて責任者を任命します。もちろん、一部の優秀な人材に依存しないよう、業務をマニュアル化して全員で共有することも大事です。チームが事業について正しく理解し、情熱を注げる環境を整えたとき、計画倒れの危険は減るでしょう。