動喫煙防止対策や健康増進法による政府主体での社内禁煙が推進されています。経営者やオーナーは、従業員からの理解を得ながら、対策を講じなければなりません。しかし企業がどこまで費用や人員を割いて取り組むべき問題か、正確に把握している人は少ないでしょう。当記事では、受動喫煙防止対策や健康増進法の概要はもちろん、先進企業による社内禁煙への取り組みなども解説するので参考としてください。

 

1.先進企業における社内禁煙

先進企業の多くでは受動喫煙防止を意識した禁煙が進んでいます。そのような企業では、社内における喫煙率が低下しているのです。このような成果を上げることができている理由は、いくつかの要因が関係しています。まず、企業の経営陣であるトップや幹部社員が、一丸となって禁煙推進に取り組めていることがあげられるでしょう。従業員の健康を維持することや、社会的責任を果たすことは、彼らのような上層部の人間の役目です。そのため口先だけでなく、自ら行動することが求められています。

ある企業の社長は、すべての社員に手紙を送りました。文面には社内禁煙を推進したいという自身の気持ちが記されていたようです。このように熱意を込めて伝えれば、末端の社員であっても会社の取り組みに納得ができます。その企業では、結果として喫煙率が低下しました。逆説的に言えば、経営者や幹部にひとりでも禁煙推進に反対する人物がいれば、企業全体の喫煙率は思うように下がらないでしょう。つまり、上層部が手本を示すことが大切なのです。

社内の制度設計を整えることは喫煙率を低下させるためには重要です。例えば、会社敷地内での喫煙を全面禁止にしたり、就業時間はたとえ社外であっても禁煙を義務付けたりという規則を作った企業もあります。そして、規則を破ったことが発覚すれば罰則が課せられるのです。このように制度を定着させるには徹底して行わなければいけません。しかし、あまりきつく締め上げすぎても効果は上がらないでしょう。なぜなら、規則を遵守できない社員が出てくるからです。規則は守られてこそ意義が生まれ人々に浸透します。そのため、最初はハードルを低く設定しておき、社員に意識が定着した頃を見計らい、徐々に規則を変化させて、自社にマッチさせると良いでしょう。

禁煙推進は、社内だけでなく社外に向けてアピールすることで高い効果を生むことがあります。一般的な会社であれば、日常的に来訪者が行き交うものです。例えば彼らの目に触れるような場所に、自社で実施している禁煙推進ポスターを掲示すると、取り組みをアピールできます。ポスターを目にした来訪者は質問を投げかけてくるかもしれませんので、所属社員であれば答えられるよう意識しなければいけません。そのための準備として禁煙に関する知識を予習する必要性も生まれるでしょう。このように社員の意識を高めることで、禁煙に対する責任感を植え付けることができるのです。

実際の先進企業の取り組み
実際に多くの先進企業は、禁煙推進活動に取り組んでいます。産業保健サービスなどを提供する企業では、全面禁煙を社内外に対して宣言しています。また1万人規模の従業員を抱える製薬会社では、そのすべての従業員に禁煙を課すようです。全国にサロンを展開する美容コンサルティング会社では、女性の禁煙推進を強調して社内外に発信しています。タバコががんの大きな危険因子であると啓発している大手生命保険会社では、すべての営業日や就業時間内の禁煙、宴席などでの禁煙、卒煙サポートプログラムなどの実施を通して禁煙推進に取り組んでいるのです。

 

2.企業が理解すべき受動喫煙防止対策とは

2020年から受動喫煙防止対策が義務付けられたことで、企業も対策を求められています。受動喫煙防止対策とは、喫煙を望まない人が受動的に喫煙してしまわないように定められたルールです。これは施設や場所によって内容が異なります。オフィスや事業所においては原則屋内禁煙です。ただし喫煙専用室や加熱式たばこ専用の喫煙室を設置することは認められています。また喫煙専用室では喫煙可能ですが飲食などは不可です。一方の加熱式たばこ専用喫煙室では、加熱式たばこのみ喫煙可能ですが、飲食することは認められています。ほかにも様々な規則が定められており、これら受動喫煙防止対策の規定に違反すると罰則が課せられることもあるのです。

受動喫煙による被害
企業における受動喫煙防止対策を行う理由のひとつは、非喫煙者の健康を守ることです。喫煙者が自分でタバコを吸ったときに吸い込む煙を主流煙と呼び、周囲の人間が吸い込む煙を副流煙と呼びます。実は副流煙の方が、ニコチンやタール、一酸化炭素といった化学物質が多く含まれるという研究結果があるのです。これらの化学物質の中には、発がん性物質が含まれているとも言われています。このように、タバコを吸っていないのに副流煙として煙を吸い込んでしまう受動喫煙が、企業内でも問題視されていました。そのため企業の経営者は、社内における喫煙問題に対し、誠実に取り組まなければならないのです。

企業に求められること
政府が定める職業安定法施行規則によると、企業は受動喫煙防止に関する自社の取り組みを、従業員を採用するタイミングなどで明らかにしなければなりません。つまり、求人広告などに社内における禁煙範囲や喫煙室の有無を明記しなければならないのです。また、受動喫煙に関する安全配慮義務も怠ってはなりません。企業が対策をしなかったことが原因で社員が受動喫煙による健康被害を訴えた場合、慰謝料を請求される可能性があるからです。

企業の取り組み方
受動喫煙防止に対して企業にできる対策は複数あります。まずは現状把握から着手すると良いでしょう。自社に何人くらいの喫煙者がいるのか、喫煙によって業務にどのような影響が出ているのかを把握します。そのためには、社員を個別に面談したりアンケートを取ったりすることが有効です。喫煙スペースを新設するにしても費用がかかるので、こうして集めたデータをもとにして進め方を検討する必要があります。

また、設備投資ばかりに気を取られて、社員の意識改革に無頓着ではよくありません。企業は、社員の喫煙意識の改善にも取り組まなければならないのです。しかし、上司が頭ごなしに説得してパワハラやセクハラだと言われないよう気をつけてください。例えば、受動喫煙防止に関する勉強会や説明会を定期的に開催するなど、時間をかけた説得が効果的です。社員一人ひとりの意識を改善できれば、周囲の人間の健康状態に配慮して行動してくれるようにもなります。

 

3.健康増進法を参考にした社内禁煙

企業が社内禁煙を推進するときには、健康増進法が参考になります。それによると企業が設置する喫煙スペースには20歳未満の人間を入室させてはいけません。たとえ本人が喫煙しなくても立ち入り自体が禁止されているのです。またタバコの煙にも留意する必要があります。喫煙スペースから煙が漏れてしまわないよう、壁や天井でしっかりと囲んだ施設にするのです。その上で、換気も正しく行う必要があります。さらに、喫煙スペースにはひと目でそれと分かる標識が必要です。例えば喫煙スペースの出入り口には、それを明記したプレートやステッカーを掲示するなどしなければなりません。その際、紛らわしい表示や、わかりにくいシンボルの使用などは禁止されています。著しく違反する標識を掲げた場合、罰則の対象となることもあるのです。

企業が健康増進法に則って設備投資をすると、それなりの費用がかかるケースがあります。そのような場合、一定の条件をクリアすることで政府による財政面および税制面からの支援を受けることが可能です。財政面の支援としては、受動喫煙防止対策助成金があげられます。これは中小企業を対象にしており、喫煙ルームを作る際の工事費などを一部サポートする制度です。また税制面での支援としては、特別償却または税額控除制度があります。

 

4.従業員が健やかに働くために必要な社内禁煙

社内禁煙は、タバコを吸わない人の健康を守るために必要な取り組みです。企業は率先して対応策を実施する必要があります。そのためにも喫煙による企業リスクをよく理解し、どのような対策を講じるべきか慎重に検討しなければなりません。企業では様々な社員が働いています。すべての従業員が健やかに業務に取り組めるよう、企業の経営者やオーナーは万全を期してください。